ナトリウム（Na）とイオウ（S）の間で電子が行ったり来たり−。電気とは電子の流れにほかならない。

　Sの電極からNaの電極に電子が流れれば、電気がたまる。それが充電。

　反対に、Na極からS極に流れれば、放電、つまり、電気を利用することができるのだ。

　この性質をうまく使えば、つくれる時にたくさんの電気をためておき、必要なときに繰り返し、しかも安価に使える蓄電池ができる。それがNAS電池。

　原理そのものは、1960年代に公開されていた。だが、長い間、実用化には至らなかった。今世紀、ようやくそれを事業化に導いたのが、同社伝統のセラミックス、焼き物の応用だった。

　βアルミナという特殊な焼き物をS極とNa極の間に挟み、電子の行き来を仲介させることにより、大量の電気がスムーズに流れるようになったのだ。

　青森県六ケ所村の二又風力発電所に設置されたNAS電池のシステムは、一般家庭10000世帯が7時間使う電気を蓄電できる。

　お天気任せで不安定といわれる再生可能エネルギーも、NAS電池と組み合わせれば、安定した電力供給源になる。

　「私たちの研究が、やっと世界のお役に立てる入り口に来たのでは」と、NAS事業部長の美馬敏之さん。

　WPC処理とは、一瞬にして金属部品の寿命を伸ばす魔法の技術。NAS電池が焼き物作りの応用なら、こちらは、はがねの焼き入れ、日本刀の鍛錬に通じる発想だ。

　表面改質。人工的に金属の組織を変えて、強度を上げる。メッキなどもその一つ。

　はがねの場合、鉄を約900度で真っ赤に焼いて、水で一気にジュッと冷やすと、引き締まった結晶ができて強度が上がる。

　理屈は同じ。鉄やダイヤの微粒子を高圧で金属材料の表面に当ててやる（ショット）。すると、2秒間で1350度に達する急加熱状態になる。

　ショットを止めれば、水がなくてもそのまま急冷状態になり、小さくて緻密な結晶（ナノ結晶）ができ、強度が上がる。

　靱性（じんせい）（粘り）が高くなり、表面の滑りもよくなって、金属の応用範囲が広くなる。

　これでたとえば金型の寿命なら、3〜4倍に延ばすことができるという。

　熱源が必要ないから著しい省エネ効果、温室効果ガスの削減効果がある。

　従業員21人の誇り高き町工場。社長の宮坂四志男さんは「うちみたいな会社が日本中に二、三千社はあるだろう。日本のものづくりはすごいと、もう一度世界に言わせたい」と抱負を語る。