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【経済】

実質賃金4年連続下げ 生活苦しいまま

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 厚生労働省が八日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、二〇一五年の働く人一人当たりの給与総額(名目賃金)は月平均三十一万三千八百五十六円で、前年より0・1%増えた。増加は二年連続。ただ物価上昇の方が大きかったため、物価の影響を考慮した実質賃金は0・9%減で、四年連続のマイナスだった。

 多くの大企業は一五年春闘で、賃金を底上げするベースアップ(ベア)を二年連続で実施したが、賃上げは物価の伸びには追い付かず、働く人が景気回復を実感する状況にはなっていない。

 給与総額を就業形態別にみると、正社員などフルタイムで働く一般労働者は0・4%増の四十万八千四百十六円、パート労働者は0・5%増の九万七千八百十八円だった。働く人のうちパートの占める割合は30・46%で、過去最高を更新した。

 働く人全体の給与の内訳は、基本給などの所定内給与は0・3%増の二十三万九千七百十二円で、十年ぶりに増加。残業代などの所定外給与は0・4%増の一万九千五百八十六円、ボーナスなど特別に支払われた給与は0・8%減の五万四千五百五十八円だった。

 同時に発表した一五年十二月の給与総額は前年同月と比べ0・1%増の五十四万四千九百九十三円だった。実質賃金は0・1%減だった。

◆増税、円安…ベア帳消し

 毎月勤労統計調査(速報)の二〇一五年の実質賃金指数は前年比0・9%減となった。「基本給の額面は少し上がったが、物価がそれ以上に上がり、生活は苦しいまま」。これが調査が示す国民の実感だ。

 しかも実質賃金のマイナスは四年連続。このうち三年間は安倍政権の経済政策、アベノミクスが推し進められてきた期間と一致する。統計は、アベノミクスは物価を押し上げることには成功したが、国民生活が向上する効果は十分に出ていないことを示している。

 アベノミクスは「金融緩和や財政出動でまず企業収益を高める。それが労働者の賃金上昇につながり、消費が活発化して再び企業がもうかる」という循環を狙った経済政策。確かに政府が介入した「官製春闘」の効果もあり、一五年春は多くの大企業が二年連続のベースアップに応じた。

 一方で一四年四月には消費税増税があり、金融緩和に伴う円安で輸入物価は上昇。食料品や生活必需品の価格は上がった。一四年夏に始まった原油価格の大幅下落がなければ物価はもっと上がっていたはず。政府主導のベアは、これらの物価の伸びには追いつかず、多くの国民は給与増を実感できていない。 (山口哲人)

 

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