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【望 〜都の空から】

薫風(3)新宿御苑 街の喧噪のみ込む

約2万本の木々が新緑のグラデーションを描く新宿御苑。広大な敷地を初夏の風が吹き抜ける=東京都新宿区上空で、本社ヘリ「あさづる」から(木口慎子撮影)

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 周辺の喧噪(けんそう)がすべてのみ込まれそうな静かな森、「新宿御苑」。新宿と渋谷両区にまたがる園内は58.3ヘクタール、東京ディズニーランドより広い。回遊式の日本庭園や明治期に先進国に学んだイギリス風景式庭園などを配置。1300本のサクラなど2万本もの木々が豊かに四季を彩る。

 その歴史は400年前にさかのぼる。徳川家康の譜代大名だった内藤清成(きよなり)の江戸屋敷がルーツで、明治維新の後、政府に上納された。

 元新聞記者の内藤家17代当主、内藤頼誼(よりよし)さん(75)は幼稚園の遠足で御苑に出掛けた記憶がある。成人してからはかつて内藤家の庭だった「玉藻池」の風雅な趣に引かれるように。「米国特派員の時代は時々、恋しく思った」という。

 第2次世界大戦中、皇室庭園だった御苑は開墾されて一部、野菜畑となった。周囲は空襲を受けて焼け野原に。大戦後の1949年、人々の憩いの場としてよみがえった森は、国民公園として一般公開されるようになった。

 森は静けさを取り戻したが、取り囲む街の変化はめまぐるしい。高層ビル群、欲望と混沌(こんとん)が支配する歌舞伎町やゴールデン街。その昔、「内藤新宿」と呼ばれた一帯は、静寂を包みながらエネルギーを放ち続ける。 (佐藤直子)

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東京新聞フォトサービス

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