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【社会】

駅から1分 そこは奈良時代 JR府中本町隣に整備

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 「日本一、JR駅に近い国史跡」が東京都府中市にある。5年前に指定されたばかりの武蔵国府(こくふ)跡国司館(こくしのたち)地区だ。市は、JR南武線・武蔵野線の府中本町駅に隣接し、奈良時代の役人の執務室兼居室として使われた国司館があったこの地区を、「武蔵府中 史跡の駅(仮称)」として整備することを決めた。かつての武蔵国の首都らしいにぎわい拠点を目指す。 (萩原誠)

 府中本町駅は東京競馬場のレース開催日は多くの乗降客があるが、他の日は人通りが少なく、競馬以外でのにぎわい創出が長年の課題だ。

 そのカギとなるのは、駅のすぐ東にあり、奈良−平安時代に武蔵国府(武蔵国の首都)があった一角に位置する国司館地区だ。面積は成人用のサッカーコートと同じくらいの七千八百平方メートル。

 二〇〇八〜一〇年にスーパーの老朽化による複合施設建設計画が浮上した際、開発業者が発掘調査を実施。その結果、奈良時代前半の地方役人の執務室兼居室とみられる建物跡、江戸時代に徳川家康がタカ狩りの休憩所に使ったとされる御殿の敷地境界跡などが見つかった。一一年二月に国史跡武蔵国府跡の追加指定を受け、市が土地を買い取った。現在は更地だ。

 市が調べたところ、国が指定した全国千七百五十二件の史跡のうち、JR駅に隣接している例は他にないと分かった。市は、ここを市内外から人が集まる憩いの空間にすることとした。合言葉は「電車を降りたら、一分で奈良時代」。

 防火地域のため国司館の木造建物の再建は難しい。そこで、柱のみを設けるなどして建物の配置を再現する。さらに、コンピューターで作り出した映像と現実空間を組み合わせるAR(拡張現実)の技術を使って、タブレット端末の画面上で、再現された国司館の建物や奈良時代に役人らが行った正月の宴会、タカ狩りに出掛ける家康などの画像を見られるようにする。多目的広場や、史跡に関する展示室、休憩室などが入る施設も整備する。

 関連の工事は今年四月から始まり建物の再現や多目的広場は一七年度までに完成。展示室などの施設は一九年度までに完成させる。施設内容は民間のアイデアを活用して検討、一七年度までに民間業者の市場調査を踏まえ、ふさわしい施設を提案してもらう。

 完成後は、解説やイベント、植栽の維持を市民ボランティアに依頼するなど、地域を挙げて運営する。府中市ふるさと文化財課の江口桂課長は「歴史的価値を高めるだけでなく、一年中人が集まり地域ににぎわいをもたらす史跡にしたい」と話す。

<武蔵国府> 武蔵国は、律令(りつりょう)国家の国。府中市によると、現在の東京都と埼玉県の全域と、神奈川県の一部にあった。その首都が武蔵国府で、府中本町駅東側にある大國魂(おおくにたま)神社とその近くに当時の役所、周辺に役人の執務室兼居室の国司館があったとされる。奈良時代の初めごろから平安時代の中ごろにかけて、政治・行政・文化・経済の中心地として栄えた。

 

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