リベラル・アーツ

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自由七科と哲学
自由七科と哲学

リベラル・アーツ (liberal arts)あるいは 自由七科(Seven Liberal Arts)とは、今日では学士課程における人文学社会科学自然科学を包括する専門分野(disciplines)のことを意味する。欧米においては神学法学医学などの専門職大学院に進学するための予備教育としての性格も帯びている。

日本語「藝術」という言葉は元来、明治時代に西周 (啓蒙家)によってリベラル・アートの訳語として造語されたものである。

原義は、「人を自由にする学問」のことであり、それを学ぶことで非奴隷たる自由人としての教養が身につくものである。

目次

[編集] 由来

リベラル・アーツの起源は古代ギリシアにまで遡る。プラトンの『国家』では哲学の予備学として、ムーシケー(文芸)および幾何学の学習が必要であることが説かれる。これは自由人としての教養であり、手工業者や商人のための訓練とは区別される。(この自由人は、古代ギリシア社会においては、同時に「非奴隷」であることも意味しており、今日的な意味で「自由」を捉えると原義はわかりにくいものになる)。

古代ローマにおいて技術(アルス ars)は自由人の諸技術(アルテース・リーベラーレース artes liberales)と手の技である機械的技術(アルテース・メーカニカエ artes mechanicae)に区別された。前者を英語に訳したものが「リベラル・アーツ」である。

ローマ時代の末期に5世紀後半から6世紀にかけて、自由技術は七つの科目からなる「自由七科」(セプテム・アルテース・リーベラーレース septem artes liberales)として定義された。自由七科はさらに、主に言語にかかわる3科目の「三学」 (トリウィウム trivium) と主に数学に関わる4科目の「四科」 (クワードリウィウム quadrivium) の二つに分けられる。

それぞれの内訳は三学が文法修辞学弁証法論理学)、四科が算術・幾何・天文・音楽である。哲学はこの自由七科の上位に位置し、自由七科を統治すると考えられた。哲学はさらに神学の予備学として、論理的思考を教えるものとされる。この自由七科の編成は、キリスト教の理念に基づき教育内容を整えるためギリシア・ローマ以来の諸学が集大成されたものと見ることもできる。

13世紀ヨーロッパで大学が誕生した当時、自由七科は学問の科目として公式に定められた。ヨーロッパ中世の大学では、法学部などの専門学部に進む前に、学生はこれらの科目を学芸学部ないし哲学部で学習した。このため現在でもヨーロッパやその大学体系を引き継いだオーストラリアの大学では、哲学は文学部でなく、独立の学部である哲学部で教えられることがある。

英米の大学ではしばしば、それぞれの学問を象徴する女神像を、講堂(オーディトリアム)の高みにぐるりと7つの学科を代表する女神の立像が飾られる。

なお、アメリカのリベラル・アーツ教育については、リベラル・アーツ・カレッジを参照のこと。

[編集] 内容

[編集] 三学

[編集] 四科(クワドリヴィウム)

[編集] 日本におけるリベラル・アーツ

[編集] 日本におけるリベラル・アーツ教育

日本では、戦前までのリベラル・アーツ教育は主に旧制中学校旧制高等学校が担っていたが、戦後においては主に大学における一般教育教養課程として行われてきた。

そのため、一部の総合大学女子大学では、独立した学部としてリベラル・アーツ教育が行われている。


単科大学を主として、米国のリベラル・アーツ・カレッジに近い教育を目指す例も存在する。


他にも、大学設立の趣旨として、リベラル・アーツ教育を基本として創立され、現在もその学風を特色としている大学は、キリスト教系私立大学に多い(いずれもその前身は戦前にまで遡る)。


近年の一般教育・教養課程の改組により設立された学部・プログラムでも、その豊かな教員構成を活用して、リベラル・アーツ教育に類似した教育方針を掲げていることがある。

最近では一部の総合大学に、「国際」や「都市」などの学際的テーマと組み合わせたリベラル・アーツ系学部が設立されている。

[編集] その他

東京都八王子市にある大学セミナーハウスのシンボルマークは、白地に緑の切り株であるが、それについている7枚の葉は自由七学科を表している。

[編集] 関連項目