連載
熱血!与良政談
長年、政治の裏側を取材してきた与良正男専門編集委員が、永田町に鋭く斬り込みます。
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「私」を多用してきたわけ=与良正男
2023/3/29 13:10 903文字お気づきの読者も多かっただろうが、このコラムでは「○○と私は思う」をはじめとして、「私」という主語を頻繁に使ってきた。それには理由がある。 とかく新聞は客観性にこだわって「○○と批判を集めそうだ」等々と主語をあいまいにしがちだ。 だが、毎日新聞は他社に先駆けて、かねて記事には取材・執筆した記者の署
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議論阻む高市氏のメンツ=与良正男
2023/3/22 13:05 916文字放送法の「政治的公平」を巡る一連の問題について、再び書く。高市早苗経済安全保障担当相が総務省の行政文書に対して一体、何を怒っているのか。ここにきて、ようやく見えてきたからだ。 14日の衆院本会議で高市氏は、こう述べた。 「問題の本質は、私の答弁が礒崎(陽輔首相補佐官=当時)氏の影響を受けたか、否か
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「ガーシー議員」生んだ罪=与良正男
2023/3/15 13:08 931文字当選後、一度も国会に出席しなかった政治家女子48党(旧NHK党)のガーシー(東谷義和)参院議員が除名された。 多数派の横暴によって少数派が弾圧・排除された戦前の歴史を踏まえ、かねて「除名は極力、避けるべきだ」と言ってきた私も、やむを得ない処分だと考えている。 ただし「これで一件落着」と済ませてはい
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放送法の解釈を元に戻せ=与良正男
2023/3/8 13:10 913文字自民党の高市早苗氏から、私のこのコラムに対して、訂正を求める内容証明郵便が送られてきたのは2016年2月だった。 当時、安倍晋三内閣の総務相だった高市氏は、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、総務相が電波停止を命じる可能性に言及していた。 驚いた私は本欄で、電波停止には極めて抑制的だっ
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決断するのが嫌な人=与良正男
2023/3/1 13:00 897文字批判をかわす巧みな答弁だと本人は考えているのかもしれない。 2月15日の衆院予算委員会のことである。長年の課題となっている選択的夫婦別姓制度への賛否について、立憲民主党の西村智奈美代表代行から問われた岸田文雄首相は、こう答えた。 「私自身は反対と申し上げたことは一度もない」 その後、同性婚の法制化
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自縄自縛の「倍増」乱発=与良正男
2023/2/22 13:02 903文字ここにも政権のほころびが見え始めたと言っていい。 岸田文雄首相が掲げる「子ども予算の倍増」をめぐって、政府の中が混乱している。 発端は首相自身の国会答弁だ。 首相は昨年来、「子ども予算を将来的に倍増する」と繰り返してきたが、何を基準に倍にするかは明確にしてこなかった。そこで15日の衆院予算委員会で
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党議拘束を外せばいい=与良正男
2023/2/15 13:04 911文字岸田文雄首相と自民党は、一体いつまで、この重要課題をたなざらしにしておくつもりなのか。 LGBTQなど性的少数者に対する「理解増進法案」の話である。元首相秘書官による同性婚への差別発言をきっかけに、国会の大きな焦点になってきているが、相変わらず自民党には慎重論が根強く、成立のめどが立たない。 法案
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「書く」のが私たちの仕事=与良正男
2023/2/8 13:05 933文字「良い判断だった」と後輩たちをほめてあげたい。 岸田文雄首相の秘書官だった荒井勝喜氏が、同性婚について「見るのも嫌だ」等々と記者団に語った事実を毎日新聞がいち早く報道したことである。 発言内容を実名で報じないオフレコ(オフ・ザ・レコード)を前提にした取材だった。しかし、取材現場からの報告を受け、編
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所得制限なしへの長い道=与良正男
2023/2/1 13:15 914文字「高額所得者の家に生まれるか、そうでないかは、子どもに責任があるわけではない」「今回の手当は親ではなく子どもに支給するのだと考えたらどうだろう」 2009年12月、こんなコラムを私は書いた。タイトルは「所得制限なしは当然」だった。 旧民主党政権が発足して約3カ月後。親の所得に関係なく「子ども手当」
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れいわが問う「議員とは」=与良正男
2023/1/25 13:06 920文字「法律の隙(すき)を突くような奇策には、やはり賛成はできないなあ」……。この話を聞いて、当初、私はそう思った。 れいわ新選組の山本太郎代表が発表した参院議員の「ローテーション」方式である。体調不良で辞職した参院議員の残り任期は、昨年の参院選比例代表での得票順に5人が1年程度で辞職を繰り返し、交代で
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安倍氏銃撃報道の痛恨事=与良正男
2023/1/18 13:17 915文字安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件で、山上徹也容疑者が殺人罪などで起訴された。 これで動機や背景を解明する場は裁判に移る。もちろん、事件を機に浮上した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との長年にわたる関係については、今後も国会での究明が必要だ。 だが、もう一つ検証しなくてはならない点が
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「検討」がダメなら「挑戦」?=与良正男
2023/1/11 13:15 916文字岸田文雄首相が年明け4日の記者会見で、しきりと口にしたのは「挑戦」という2文字だった。 「新たな挑戦をする1年にしたい」「これ以上先送りできない課題に正面から愚直に挑戦し……」等々。「異次元の少子化対策に挑戦する」とも語った。 岸田氏は就任以来、国会答弁や記者会見で「あらゆる選択肢を排除せず、検討
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有権者も変わる1年に=与良正男
2023/1/4 13:08 932文字年明け、ある文書を久しぶりに読み返した。1989年5月、自民党がまとめた政治改革大綱だ。リクルート事件を機に同党に対する批判がかつてなく強まる中で、大綱はこう記していた。 「信頼を回復するためには、今こそ自らの出血と犠牲を覚悟して、国民に政治家の良心と責任感を示す時である」 大綱には、衆院への小選
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「政治とカネ」の半世紀=与良正男
2022/12/28 12:57 924文字戦後間もなく制定された政治資金規正法が、大幅に改正されたのは1975年だった。 金脈問題で退陣した田中角栄内閣の後を受けた三木武夫内閣の時代。自民党内から猛反発を受けながらも、三木氏はそれまで無制限だった政治献金額に上限を設ける改正を実現させた。「クリーン三木」ともてはやされたものだ。 実はこの時
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「2%」をやめればいい=与良正男
2022/12/21 13:04 907文字防衛費を大幅に増やすのが、いかに難しいか。それがよく分かったということではないだろうか。 岸田文雄内閣が、相手国のミサイル発射基地などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を認める戦後安全保障政策の大転換に踏み切った。 同時に掲げたのが、5年後に防衛関連予算を国内総生産(GDP)比2%に倍増する
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立憲の「妥協」を評価する=与良正男
2022/12/14 13:36 919文字世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受けた被害者救済法が成立した。 これで実際に被害を防げるかどうかは未知数だ。このため、法律が不十分だと認めながら賛成した(つまり妥協した)立憲民主党執行部の判断に対して、一部の所属議員や支持者らからは早速、批判が出ている。 でも、かねて「政治を前に進めるため
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弱い首相の政策大転換=与良正男
2022/12/7 13:14 911文字閣僚の辞任ドミノ等々で岸田文雄首相は苦境に陥っているにもかかわらず、大きな政策転換が矢継ぎ早に進む。私もあまり経験したことがない不思議な政治状況だ。 一つは、他国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有について自民、公明両党が合意したこと。日本が半世紀以上、維持してきた専
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「説明責任」の履き違え=与良正男
2022/11/30 13:18 909文字1カ月に3閣僚が辞任する異常事態の中で、ずっと気になっていることがある。問題が発覚するたびに岸田文雄首相が繰り返す「説明責任」という言葉である。 自らの政治団体が事務所の賃料として母親や妻に約1400万円を支払っていた等々の問題が取りざたされている秋葉賢也復興相についても、首相はこう語った。 「説
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「選挙の否定」という病=与良正男
2022/11/16 13:01 901文字今度の米国・中間選挙で、私がずっと注目してきたのは、共和党候補の多くに見られた「選挙否定論者」と呼ばれる人たちの動向だった。 2年前の大統領選には不正があり、本当はトランプ氏が再選されていたはずだ――。そんな考えを押し出す政治家を指す。 中間選挙は予想を覆して民主党が踏ん張る結果となったから、選挙
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サミット解散か、花道か=与良正男
2022/11/9 13:07 918文字前回衆院選から1年余が過ぎ、政界では「次の総選挙はいつか」、つまり「岸田文雄首相はいつ衆院を解散するのか」という話が、ぽつりぽつりと語られ始めた。 例えば、安倍晋三元首相を追悼する国会演説以来、再び出番が増えている立憲民主党の野田佳彦元首相は、先日のラジオ番組で、こう語った。 「広島サミットの後く
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