連載
24色のペン
国内外の異なる部署で取材する24人の記者が交代で手がけるコラム。原則、毎日1本お届けします。
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広島で考えたタリバンと米軍=鵜塚健(社会部大阪グループ)
2024/6/24 06:00 1778文字アフガニスタンの首都カブールから車を乗り継ぎ、国境へ。隣国パキスタンの領内に入ると、元教員の女性、シャミームさん(28)=活動名=はすかさず頭にかぶっていたスカーフを外した。イスラム主義組織タリバンによる厳しい監視の目はもう届かないからだ。 シャミームさんは、国内外で知られる女性人権団体「RAWA
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紙ドリルをやめた校長の思い=大沢瑞季(デジタル報道グループ)
2024/6/23 06:00 2103文字東京都内のある公立小学校では、紙のドリルを使うのをやめた。代わりに導入したのはAI(人工知能)ドリル。それから半年後、子供たちはどのように変化したのだろうか。 タブレット端末の画面に漢字の問題が出てくると、子供たちは指や専用のタッチペンを使って書き込んでいく。正解だと次の問題に進めるが、間違うと画
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甲子園を夢見た野球少女は今も=堀井泰孝(古河通信部)
2024/6/21 06:00 1807文字「テレビに映った大谷(翔平)選手を指さして、息子がママー、ママーって言うんです」。社会人野球のクラブチーム・茨城ゴールデンゴールズ(GG)監督の片岡安祐美さん(37)は大きな目を細めて笑う。かつて甲子園を夢見た野球少女も2歳児の母親になった。それでも「もう37歳ではなく、まだ37歳」と、新たな夢へ
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「虎に翼」で描かれない もう一つの韓国物語=堀山明子(外信部)
2024/6/20 06:00 2537文字法服を着た女性がほほ笑む古ぼけた白黒写真をソウルで見つけた。NHKドラマ「虎に翼」の主人公のモデルとなった日本初の女性弁護士、三淵嘉子氏と雰囲気がよく似ているが別人だ。女性は三淵氏と同じ1914年生まれ、韓国で女性弁護士1号となった李兌栄(イテヨン)氏(享年84)。「悪法は法じゃない」と訴え、家族
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東北出身者、都心を歩く=鈴木英生(オピニオン編集部)
2024/6/19 06:00 2800文字「あーこれこれ」。会うなり、彼女が足元を指さす。JR東京駅丸の内南口。ドーム天井の下に大正期の首相、原敬(1856~1921年)の刺殺現場を示す目印があった。彼女は、東北史などの研究者、山内明美・宮城教育大准教授(48)だ。5月末の曇天の日、東京駅と皇居に挟まれた都心、丸の内一帯を共に歩いた。 山
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6月23日のあとも=喜屋武真之介(写真映像報道部兼那覇支局)
2024/6/18 06:00 1548文字今年も間もなく、沖縄は6月23日の「慰霊の日」を迎える。沖縄戦を指揮した日本軍第32軍の牛島満司令官が自決して組織的な戦闘が終わった日とされ(※22日説もある)、糸満市摩文仁(まぶに)の「平和の礎(いしじ)」には大勢の遺族たちが足を運び、名前が刻まれた故人に思いをはせる。私も毎年、取材前に欠かさず
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気候変動と言ってはいけない=八田浩輔(NY支局)
2024/6/17 06:00 1794文字その日、米フロリダ州の気象予報士スティーブ・マクラフリンさんは、観測史上最も暑い月の連続記録がまた更新されたとニュース番組で伝えた。米3大テレビネットワークの一つ、NBC系列の地方局で働くマクラフリンさんは、「気候変動リポーター」の肩書も持つ異色のベテラン。米テレビ界最高の栄誉であるエミー賞の天気
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LGBTQパレードで見た変化=日下部元美(ソウル支局)
2024/6/16 06:00 1724文字6月初旬、ソウルでLGBTQなど性的少数者の権利を訴える「ソウルクィアパレード」が開催された。韓国では保守系のキリスト教団体を中心に反発が根強く、毎年パレード当日はソウル市内で反対派が集会を開催する。今年はそれだけでなく、パレードや関連イベントに対し、市内の広場や公共施設の使用を不許可とする決定が
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日韓をつないだ小舟=鈴木琢磨(オピニオン編集部)
2024/6/14 06:00 1871文字まぎれもなく日本と韓国の真の懸け橋でした。1973年、東京・京橋にオープンした韓国専門書店「三中堂」のことです。K―POPや韓流シネマのブームなど想像すらできなかった時代、日本の韓国・朝鮮学徒はソウルから届いたばかりの本や歌のカセットテープをここで手に入れていました。私もそう。しばらくごぶさたして
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「1人」は悪いことじゃない=大場あい(くらし科学環境部)
2024/6/13 06:00 1644文字5人に2人が孤独を感じている――。政府が3月に公表した調査結果だ。 16歳以上の2万人を対象にした調査で、孤独感が「しばしば・常にある」と回答した人は4・8%、「ときどき」「たまに」と合わせると39・3%に上った。 人とのつながりが少ないこと(社会的孤立)、孤独を感じることはいずれも心身に悪影響を
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人工呼吸器で自由に生きた=銭場裕司(社会部東京グループ)
2024/6/12 06:00 2108文字重い障害のために人工呼吸器を使っても、病院や施設ではなく地域で暮らし、思うままに外出できる姿を見せた人だった。 2023年8月に55歳で急逝した東京都北区の小田政利さん。5月に開かれたしのぶ会には100人を超える友人や介助者らが集まり、おおらかで、自由に生きた小田さんとの思い出を語り合った。 ◇2
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「怒り」とどう向き合う?=田中理知(社会部中部グループ)
2024/6/11 06:00 1758文字「怒ることってあんまりないでしょ?」。のんびりした話し方のせいなのか、周囲からそう言われることが多い。でも、そんなことはない。先日も、実家で夕食の準備を手伝わない父親にイラッとし、「箸ぐらい並べたら」とついきつめに言ってしまった。 怒りと上手に付き合う心理トレーニング「アンガーマネジメント」は広く
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政策活動費の実態=飼手勇介(政治部)
2024/6/10 06:00 1834文字自民党の政治とカネの問題を巡って、長らく「ブラックボックス」と批判されてきた政策活動費について、領収書の10年後公開などを盛り込んだ政治資金規正法改正案が自民、公明党、日本維新の会などの賛成多数で衆院を通過した。今国会で成立する見通しだ。国民の批判に危機感を強めた岸田文雄首相が、維新案を丸のみした
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外国人「二重価格」、インドでは=川上珠実(ニューデリー支局)
2024/6/9 06:00 1740文字インドの観光スポットでは、二つの価格が設定されていることが多い。一つは外国人観光客向けで、もう一つはインド人観光客向けだ。インド人は当然のこととして受け止めているものだと思っていたが、実際に話を聞いてみると、意外にも否定的な意見が目立った。 「600ルピー(約1120円)もするの?」。首都ニューデ
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モンゴル人留学生テンギスさんが見る星=川上晃弘(社会部東京グループ)
2024/6/7 06:00 1761文字5月下旬、待ち合わせをしたのは東海大学湘南キャンパス(神奈川県平塚市)の正門前だった。約束した時刻の10分前にもかかわらず、彼は既に到着していた。髪を短くカットし、青いシャツがよく似合っていた。3カ月前に会ったときより、オシャレに見えた。ただ、真面目な目元の印象は変わらない。 ブンブグル・テンギス
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出産施設の選び方=黒田阿紗子(くらし科学環境部)
2024/6/6 06:00 1890文字おめでたいのに、懐が痛くなる。2022年度の全国平均は48万円。100万円を超えるケースもある。都道府県別では最も高い東京都が60万円なのに対し、最も低い熊本県は36万円と地域差も大きい。そう、出産費用のことだ。 自由診療である正常分娩(ぶんべん)は、病院や診療所が自由に価格を決められる。厚生労働
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「二級市民」視への憤り=和田浩明(川崎支局)
2024/6/5 06:00 1839文字曽徳深さん(84)は横浜中華街の重鎮だ。中国から両親がやってきたのは約100年前のことだ。以来、一家は関東大震災や第二次世界大戦を乗り越え、日本人と支え合いながら生きてきた。日本生まれの曽さんは日本の高校、大学を卒業、華僑2世の永住者として中華街を古里と思い懸命に働いた。神奈川県内の在日中国人をま
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石川祐希らを支える科学者=小林悠太(運動部)
2024/6/4 06:00 2001文字4日から北九州市でバレーボール男子の国際大会、ネーションズリーグ福岡大会が始まる。世界トップクラスの国・地域が参加する大会には、福岡在住で日本代表を陰で支える異色の研究者も足を運ぶ。九州産業大スポーツ健康科学科教授で元日本代表の増村雅尚さん(47)だ。 身長190センチのアタッカーとしてVリーグで
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ファンを生む意識=貝塚太一(写真映像報道部北海道)
2024/6/3 06:00 1253文字12年前、オホーツク海に面する北海道紋別市を初めて訪れた。札幌から約270キロ離れ、車で4時間かかる。紋別空港の発着便は東京・羽田空港から1日1往復のみ。高速道路や鉄道も近くを通らず、目的なしに立ち寄ることが少ない町とも言える。 当時、私は北海道の道の駅のスタンプラリーで全駅制覇を目指していた。道
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パンデミック条約に反対する理由=國枝すみれ(デジタル報道グループ)
2024/6/2 06:00 1748文字5月31日、東京・日比谷で「WHOから命をまもる国民運動大決起集会」が始まった。 「日本政府はテドロス(WHO)事務局長の解任を要求せよ」 「WHO脱退を閣議で決めろ」 全国から日比谷公園大音楽堂(通称・野音)に集まった人々が厚生労働省のある霞が関の方角に顔を向けて叫ぶ。 集会の目的は「WHOを盲
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