「人造人魚という話を最初に構想したのは2002年ぐらいに入院した時のベッドの上だったな」
「病院のベッドは退屈するからね」
「まあ、そこからかなり変化しているのも事実なのだけどね」
「どこが変化したわけ?」
「その当時は若虎マンに関する設定は何も無かったな」
「じゃあブラザー星人も?」
「そうだな」
「しかし、20世紀初頭の割に、宇宙の話題が多いね」
「その時期には、既にツィオルコフスキーが活動しているしね。宇宙は既に人々が意識する場所になりつつあったわけだ」
「なぜそんな時代設定なの?」
「だからね。幻想を語るには夢のあった時代である必要がある。しかし技術が足りない。そこで、技術は宇宙からの来訪者が持ち込む形にしてある。その方がまだ整合が取れる」
「分かった。蒸気機関で巨大ロボットが自由自在に動くような茶番は御免を被るというわけだね」
「まあな。蒸気機関に依存しないスチームパンクなのだ、と言えばそうなのかもしれない」
「じゃあさ。冒頭の酒場で若虎マンが実在するか否かの議論が起きるけど、結局実在するわけ?」
「ネタバレは避けるよ」
「じゃあさ。コジフ商会が扱っている謎の商品MMMとMMって、実在するの? やっぱりMMって、マン・メードなの? つまり女装した男のメードなの? 酒場にいた女装メードがMMなの?」
「ネタバレは避けるよ」
幻想に正解はない §
「正解は?」
「正解なんてないよ」
「なんで?」
「幻想だからね。幻想には実体は無いのだ。だから誰に対してどんな姿を披露するか分からない。それゆえに解釈は人それぞれだ。誰がどう解釈したとしても、それが間違いとが言い切れない」
「じゃあ、この小説には中身が無いの?」
「そんなことはない。幻想をたたき出すための刺激を満たしてある」