「スーパー99は子供時代のトラウマである」
「なぜ?」
「コミック本には既刊の宣伝が挟んであるだろ?」
「うん」
「そこに、いろいろなコミックが並んでいた。そこにスーパー99もあった。しかし、作品数は膨大だ。どうしてもスーパー99の優先順位は落ちざるを得ない。しかも子供の頃は小説中心だったから、ますますコミックは遠い」
「分かった。だから、紫電改の鷹は読んでもスーパー99は読めないわけだ」
「そういうことだ」
「それで?」
「最近になってやっとスーパー99を読んだのはトラウマ解消である」
「なるほど」
「しかし、話はそれだけじゃないことに気付いた」
「なんだよ」
「事実上の松本ヤマトの原作と言える」
「えー」
「けっこう酷似する特徴がある」
- 敵艦に目玉
- 主人公がススム
- 主人公に兄
- 味方は無敵のたった一隻のフネ
- 無人の新造艦にみんな乗り込む
- ギャグキャラが乗り込む
- 兄の親友が乗り込む
- 沖田のような名前の沖博士
- 実は兄は生きていた
「それってどういうことだい?」
「ヤマトはひっくり返すと潜水艦に見える……。隠しモチーフがスーパー99なら当然だ」
「えー」
「では、これらの特徴はどこから来たか」
「松本零士由来?」
「だとすると、松本零士参加前のヤマト企画には存在しない特徴であるはずだ」
「なるほど」
「事実、主人公名は違う」
「確かに」
「実はヤマトのストーリー案は52話案や39話案を経て放送中に26話案としてまとめられて行っている。そういうストーリー案の改定ごとに、松本色が強くなっていったのではないか」
「最初からスーパー99っぽくはなかったけれど、徐々にそれっぽくなったわけだね」
「従って、スーパー99的な世界観から逸脱することを、松本先生は快く思わない。だから、さらば宇宙戦艦ヤマトは大嫌い。そもそもススム少年は死ぬキャラじゃない」
「沖田は死んでもいいの?」
「沖田はいいのだ。スーパー99の沖博士からかなり変化した別人キャラだから」
「えー」
「しかし、スタッフの別の誰かにすればスーパー99的になってしまったヤマトこそが逸脱であり、本来のヤマトじゃない。だから、零戦黒雲一家的なさらば宇宙戦艦ヤマトができあがってしまう」
「状況がねじれているね」
「ねじれまくりだ」
「それでいいのかよ」
「そのねじれぐあいを、ニヤニヤを楽しめてこそのロートルのヤマトファンだ」
「ぎゃふん」
「あー、ヤマト2199で初めてヤマトを知った若いファンはぜんぜん知る必要なんてないぞ」
「ひ~」
「老ヤマトファンは死なず。ただ消え去るのみ。と言って消えていきたいものだ」
ヤマト2199問題 §
「すると、ヤマト2199はねじれた命題を背負い込む」
「それは何?」
「松本的になる要素と、松本的要素から逸脱していく要素の双方を抱え込むことになる」
「没要素を復活していくと、松本的なものと、そうでないものがあるわけだね」
「しかし、そのねじれこそがヤマト2199を魅力的にする可能性もある。そうそう否定したものではないよ」
「ぎゃふん」