「Apple製品には職業としての驚き屋がいる、という話題は昔からあるのだが、驚き屋でも何でも無い自分もこれには驚いた」
「なんだい?」
「iPhone 5が発売されたのだが、いつもなら入ってくる嘘くさい『驚きの声』があまり来ない。すぐ買うぞ、並んで買うぞ、という人がほとんど出てこない。その代わり、iPhone 5のOSであるiOS6に含まれる地図の話題ばかりが聞こえる。なんと日経新聞まで地図の話題を取り上げるほどだ」
「iPhone 5の話題として?」
「ではなくiPhone 5の地図として」
「えー」
「だいたいiPhone 5とかiOS6の話題を1とすると、地図の話題は10以上」
「それは極端だね」
「これだけ極端だとこちらも驚くよ。全くの奇跡だ。誰の予想も超えた超進化を地図が遂げているよ」
「具体的に何が悪いのだい?」
「表面的にはいろいろみんな言っているが、よりシャープに絞り込むと以下のようなことらしい。ただし自分では検証していないのであくまで伝聞だ。あくまで話半分で見てくれ」
- 測地系の違うデータを混ぜてるのではないか?
- カーナビの地図なので文字情報が少ないのでは無いか?
- 素人が明らかに作ってる。
- 検証に時間を掛けていない。
- ワールドワイドで問題が出ているらしい (日本だけもっとマシな地図業者の地図に差し替えれば良い問題では無いようだ)
「測地系ってなに?」
「詳しくは、近日中に技術評論社から出る予定の自著を見てくれ。既に著者較正は終わった段階だから、ちょっと待てば店頭に並ぶはずだ」
「宣伝かよ」
「いやね。本当はその本のフォローアップのつもりで、【▲→川俣晶の縁側→ソフトウェア→地理情報システム】というキーワードを『川俣晶の縁側』に用意したのだけど、本が出る前に話題が出ちゃったよ、はははは」
「笑い事か」
「この本は、地理情報システム(GIS)は素人が予備知識無しにうっかり足を踏み入れると危ない世界だよ、ということを説明しているのだ」
「たしかにそういう本があることはいいことだね」
「そうだ。そして、今回の事件はこういう本がなぜ必用なのか理由を明確にしてくれた」
「素人がうっかり足を踏み込むと、大企業であろうと天下のAppleであろうと、日経本紙にまで名指しで批判されるリスクがあるってことだね」
「そうだ。地図による違いや、測地系による違いなども詳しく説明してあるから、Appleはこの本が出てから熟読して、それから地図アプリを作るべきであったね」
「天下のAppleに君ごときが意見できるのかよ」
「普通ならできないが、思いっきり大穴を自分で開けて隙を作ってくれたからな」
「ほんとかよ」
「今ごろ全国100万(推定)の地図のプロとマニアが『俺にやらせればこんなみっともない真似はさせないのに』と思っている頃だろう」
「地図のプロとかマニアって本当にいるの?」
「いるいる。いっぱいいるぞ。こちらも本が出る前から『ここがおかしい』という突っ込みが怖いぐらいだ。地図が大好きということまでは自信を持って断言できるが、見落としや誤解があることまでは否定できない」
「具体的に目次ぐらいは教えてくれよ」
「出版社がまだ公開していないようだから、まだ内緒だ」
「えー、さわりぐらいは教えてよ」
「そうだな。この本のためにiOSもAndroidも開発環境を整備した。当然WindowsでiOSの開発環境は構築できないのでMacを1台買った。Objectivce-Cのコードも書いた。Javaのコードも書いた」
「iOS6は?」
「書いたタイミングの関係でiOS6には踏み込んでいない」
「そこは残念だね」
「まさにタイミングが悪かった」