収容所の鷹栖所長とデュエルすることになった不動遊星。
しかし、彼のデッキは手元にはない。
矢薙典膳や氷室仁が持つデッキは、強制的に鷹栖所長に没収されてしまう。彼らからデッキを借りることすらできない。
このままでは、遊星はデッキ不所持で不戦敗となってしまう。
だが、そのとき、収容所の荒くれたちが遊星を取り囲んだ。
「ちょっと顔を貸せよ」
「なんだ」と遊星は警戒した。
「ふ。デュエリストなら、誰でも切り札の1枚は大切に隠し持っているものさ!」
「なに?」
「俺たちが持っている切り札の1枚を全ておまえに託す。みんなで相談して、そう決めた。さあ、オレのとっておきを受け取ってこれ。これで鷹栖の野郎をぶっ飛ばしてくれ」
「これは……。ブラック・マジシャン・ガール……」
「悪いか。これがオレのベスト・パートナーだ」
「いや。確かにこれはブラック・マジシャンとのコンボも強力な、切り札になるカードだ。ありがたく使わせてもらおう」
「分かってくれるか。ありがてえ」
そして次の男が遊星にカードを渡した。「ちょっと恥ずかしいけど、これがオレの1枚だ」
「またブラック・マジシャン・ガール……」
「同じカードじゃダメかな?」
「いや、そんなことはない。魂のこもった良いカードだ」
「へへへ。ありがてえ」
そして次の男が遊星にカードを渡した。「オレのラブがこもったカードだ」
「これもブラック・マジシャン・ガール……」
「やっぱりダメ?」
「いや、同名カードはデッキに3枚まで入れることができる。有効に使わせてもらうよ」
そして次の男が遊星にカードを渡した。「オレのカードも受け取ってくれ!」
「まさか。こいつもブラック・マジシャン・ガール……」
「じゃあ、使ってくれよ!」
「待て。同名カードはデッキに3枚までしか……」
そして次の男が遊星にカードを渡した。「ブラマジガール最高!」
「ちょ、ちょっと待て。言い方を変えても同じブラック・マジシャン・ガールじゃないか」
そして次の男が遊星にカードを渡した。「BMG最高!」
「だから言い方を変えてもカードの名前は同じブラック・マジシャン・ガールだぞ」
そして次の男が遊星にカードを渡した。「お、オレも実はBMGなんだ」
「おい」
「オレの檄ラブ、ブラマジガール受け取ってくれ!」
「ちょっと」
「オレも大好きBMG」
「待て」
「BMGの魅力、鷹栖所長に教えてやってくれよ!」
「だから」
「ブラック・マジシャン・ガール最高!」
「誰か他のカードを持ってる奴はいないのか!」
「お、オレ。お注射天使リリーなら……」
「マジックは? トラップは?」
「(し~ん)」
そして、鷹栖所長とデュエルする時刻が訪れた。
「ではさっそくデュエルを始めようか」
という鷹栖所長を遊星は遮った。
「その前にカードをトレードしないか? ここに超人気のブラック・マジシャン・ガールのカードが40枚ある。価値があるものだぞ。ぜひ欲しいだろう?」
「はっはっは。オレがそんなものを欲しがると思ったか」
「やはり買収はだめか」
「そのカードは全て没収だ! 全部オレのコレクション金庫にいれておけ! 後でたっぷり愛でてやるから大切に扱えよ!」
「って、やっぱり欲しいのかよ」