道を歩いているときに、ふと思いついたのでメモします。
さらば宇宙戦艦ヤマトのデスラー対ヤマトの戦いは、実は多重的な構造を持っています。
ここで注目されるのはたいていの場合デスラー戦法です。ドメルの戦い方がなぜデスラー戦法なんだよっっっ!という突っ込みが発生するのがお約束ですね。
しかし、それによって見落とされがちなことがあります。
実は、この駆逐艦隊は、駆逐艦らしい戦い方をしていないのです。
駆逐艦とは何か? §
駆逐艦とは、本来は水雷艇を駆逐する艦です。
第2次大戦頃の駆逐艦のイメージとしては、防御力はないが小さく高速で、大型艦すら撃沈できる強力な魚雷を搭載した艦です。つまり、小さく脆弱だが、戦艦すら撃沈しうる力を持ったハイリスク・ハイリターン型の艦種です。
ヤマトというシリーズの中においても、このイメージは取り入れられています。たとえば、冥王星海戦において、古代守の指揮する駆逐艦ゆきかぜは、魚雷をイメージしたと思われるミサイルによって、「敵ミサイル艦」を撃沈しています。これは確認できる限り、この海戦で地球防衛艦隊が沈めた唯一の敵艦です。
ところが、白色彗星の駆逐艦は、回転式の砲塔から連続して発射される速射砲を使うだけで、大型艦すら撃沈できる必殺のハイリスク・ハイリターン兵器を使いません。
その点で、この駆逐艦は、駆逐艦らしくないのです。
しかしヤマトはピンチに追い込まれた §
必殺兵器を欠いた白色彗星の駆逐艦は、ならば弱いのかと言えばそうではありません。事実として、ヤマトの全兵器使用不能という状態まで追い込んでいます。当然のことながら、全兵器が使えなくなった戦艦に、もはや戦艦としての仕事はできません。戦場から後退して修理を行うしかありません。その間、敵はヤマトのことを一切考えることなく、自由に行動できることになります。そして、たいていの場合、そのような期限を切られた自由があれば十分です。
では、ヤマトをここまで追い込んだ敵がどれほどあるかというと、実は多くないのです。あえて見てみると、冥王星の反射衛星砲のような特殊な兵器、ガルマンウルフのような特殊能力を持った艦などが目に付きます。強いて普通の艦がヤマトをピンチに追い込んだ事例を見てみると、ドメル艦隊ぐらいしか思いつきません。ここで、瞬間物質移送機があるのは白色彗星駆逐艦の事例と同じとして、特殊装備にカウントしないことにしましょう。
すると、驚くべき結論が出てきます。
白色彗星の駆逐艦隊は、ガミラスの最強空母4隻+ガミラスの最強知将ドメルに匹敵する成果をたたき出したのです。いかに新型とはいえ、白色彗星艦隊の主力ですらない小型艦部隊が、ガミラス最強の艦隊に匹敵したのです。
いや、ドリルミサイルの存在を特殊兵器にカウントすれば、それに頼っていない白色彗星の駆逐艦隊は、ドメル艦隊以上と言えるかもしれません。
必殺兵器を持たない駆逐艦隊が、なぜそれほどの成果を出せたのでしょう?
日清戦争での連合海軍の戦い方 §
さて、ここからが本題です。
日清戦争では清国海軍と日本海軍が戦っています。
このとき、清国には定遠、鎮遠という大型の戦艦があり、日本にはそれに対抗できるだけの戦艦がありませんでした。
しかし、日本海軍は勝利しました。
なぜかといえば、速射砲を装備した高速の艦で、敵艦の装備を破壊してしまったからだと言います。つまり、沈められなくても、戦闘力さえ奪ってしまえば勝てるわけです。
これはまさに、白色彗星の駆逐艦隊の戦い方と同じです。
ヤマトの敵が日本海軍の戦い方を披露する皮肉 §
日本を勝利に導いた戦い方を、ヤマトの敵が実践している……という描写は、考えてみると皮肉ですね。しかし、その皮肉なところが、私は好きです。