『ラスト・ブラッド』20点(100点満点中)
BLOOD THE LAST VAMPIRE 2009年5月29日(金)より、TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー 2009年/香港、日本、フランス/カラー/91分/配給:アスミック・エース
監督:クリス・ナオン アクション監督:コリー・ユン 原作:Production I.G 脚本:神山健治、ロニー・ユー 出演:チョン・ジヒョン アリソン・ミラー 小雪 倉田保昭
チョン・ジヒョンのセーラー服姿に1800円を払う価値を見出せるか
本作のオリジナルとなったアニメーション作品『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(2000年、日本)は、クエンティン・タランティーノ監督大のお気に入り。『キル・ビル』(03年)のアニメ部分を作ってもらおうと、製作会社のProduction I.Gに直接出向いたエピソードは映画ファンの間では有名だ。
『ラスト・ブラッド』は、海外での評価が高いそんな『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の実写映画化。戦国時代以来、人類の敵としてはびこるオニ=ヴァンパイアと戦う日本人少女役を、「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンが演じているのが話題だ。
アメリカがベトナム戦争遂行中の1970年。ある在日米軍基地内に侵入したオニを退治すべく、サヤ(チョン・ジヒョン)はアメリカンスクールに潜入する。日本刀を武器に超人的な活躍を見せる彼女の最終目的は、すべてのオニの起源といわれる最強の敵オニゲン(小雪)を倒すことだった。
序盤の、「路線は銀座線なのに車両は丸の内線」という摩訶不思議な地下鉄内で繰り広げられるアクションなどは、アニメ版の雰囲気をよく踏襲している。
ほかにも日本人女子高生を韓国少女が演じていたり、異国情緒たっぷりな田舎風景が登場したりと、相変わらずトンチンカンな日本描写が目に付くが、そもそも無国籍なムードも原作の持ち味のひとつであるから、さほど問題ではない。
ただ不思議なもので、アニメーションだと「スタイリッシュ」と感じたものが、実写になると陳腐になったりする。
この原作アニメの場合、もともと設定(女の子が化け物と戦う)に真新しさはなく、品質の高い映像とアクション演出が高く評価されたもの。ところがその「映像美」は、実写になると既視感たっぷり。ウリである日本刀アクションなども、誰もが予想した通りワイヤー使いまくり。ここ15年間くらいアクション映画を見たことない人にとっては、衝撃的なまでの迫力を感じさせてくれる。
チョン・ジヒョン(ハリウッド活動用の芸名はGianna Jun)は、セーラー服で斬鉄剣をふりまわす女子高生役だが、最大の見せ場は小雪演じるラスボスとの戦いか。とはいえ、いずれもアクションの素人であるから、さほどのものはない。心なしか、小雪の演技もあまり力が入っているようには見えない。
2000年当時、派手なメディアミックスで話題になったアニメシリーズだが、結局実写には向いていなかったというのが結論か。