「ピッチ・パーフェクト」55点(100点満点中)
監督:ジェイソン・ムーア 出演:アナ・ケンドリック スカイラー・アスティン
最後の楽曲がいまいち
合唱映画は個性的なものが多いが、大学のアカペラ部で奮闘する女の子の成長もの「ピッチ・パーフェクト」もそのひとつ。現在パート2が本国で爆発的人気となっており、遅ればせながら日本でも1作目から公開されることになった。
大学教授の父を持つ音楽好きのベッカ(アナ・ケンドリック)は、父親の強い要望で父の大学に入ることになった。DJのバイトに精を出し、大学生活などつゆほどにも興味も持てないベッカだったが、シャワー中の鼻歌をアカペラ部のクロエ(ブリタニー・スノウ)に聞かれ、半ば強引にスカウトされてしまう。
続編も年内日本公開予定なので、とりあえずこのビッグウェーブに乗りたいひとは本作からみないといけない。
評判通り楽曲はどれも悪くない。YouTube動画でも人気が出たカップを使ってのパフォーマンスは思ったより完成度が低くいまいちだが、おなじみの有名曲をアカペラでアレンジしたものは新鮮に感じられる。リズム感も抜群で、座っているのがもどかしいほどノリノリになれる。
主演のアナ・ケンドリックは「イントゥ・ザ・ウッズ」(14年)のシンデレラ役でそのアクの強い容貌が印象を残したのが記憶に新しい。順番としてはこちらが先なのだが、日本では「イントゥ〜」の人気に本作も乗っかろう、といった趣か。ひと目で覚えられる出っ歯気味の口元が印象的な、美人だかなんだかよくわからない個性派女優といえるだろう。
ブロードウェイ出身だから歌はお手のもので、マンネリ保守的な女子部に新風を吹き込む役柄を、そこそこの説得力で演じている。
そこそこというのは、じっさい彼女の歌唱力、魅力、技術がそこそこなのでそう言うほかないという意味である。
一方ライバルの男子チームのパフォーマンスは素人目にも圧倒的で、こいつらを上回るようなストーリーが著しく真実味を欠く結果となっている。
誰がどうみても、アカペラは男チームの方がいい。劇中、女だけのチームは低音がないのでだめだ、とのセリフがあるが100パーセント同意するし、じっさいその不利を最後までアナ・ケンドリックたちのチームが克服できたとは思えない。クライマックスの曲がいまいち盛り上がりに欠ける点も、そうした感想を強くする。結局音楽映画というものは、楽曲しだいとなってしまうことが本作には感じられる。
とはいえ、シャワールームでスカウトされるシーンでは全裸姿を必死に隠そうとするアナ・ケンドリックの恥ずかしそうな表情を楽しめるし、その他の女の子も胸の谷間重視でキャスティングされたと思しき逸乳いやいや逸材ぞろいで、男性客にとっては目の保養になる。
なにより続編が常軌を逸したヒットとなっている以上、それを楽しむために見ないわけにはいかないので、ここは多少の事は目をつぶって、この手の映画が大好きなオサレ女子の誘いに乗って一緒に見てノリノリで褒めてあげるのが無難であろう。