「ザ・レイド GOKUDO」70点(100点満点中)
監督:ギャレス・エヴァンス 出演:イコ・ウワイス アリフィン・プトラ

監督名でわくわくするアクション映画

ギャレス・エヴァンス監督は、同じことをするのは嫌いなのだという。「ザ・レイド」(11年)の続編を作っておいてなに言ってんのと思わずつっこみたいところだが、なるほど見てみるとこのパート2はかなり前作とコンセプトが異なっている。

前作での死闘を生き延びたラマ(イコ・ウワイス)は、息着く間もなく地元マフィアの潜入捜査を命じられる。長い期間をかけ組織のボス(ティオ・パクソデウー)に近づいたはいいが、ラマは主目的である汚職警官の正体を突き止める前に、ゴトウ(遠藤憲一)率いる対立するヤクザ組織との抗争に巻き込まれてゆく。

「ザ・レイド」は、予算が少ないこともあって、一カ所=高層マンションをひたすら上に向かって進む戦闘ムービーだった。だがこの2作目は別の企画の脚本を続編用に書き直した製作経緯もあって、だいぶ雰囲気が異なる。

アイデアあふれるストリクトな格闘シーンの面白さは健在だが、前作のような無駄をそぎ落としたシンプル・イズ・ベストの良さは失われた。ゴッドファーザーのような複雑、あるいや単にややこしい人物設定&パワーバランスの中で、主人公が生存のため全方位戦闘をするアクション映画。そんな感じだ。

多くの日本人からすると、いまどき中途半端な極道映画になっているのは、あまり興味をひかれる要素ではあるまい。しかも脚本は冗長で無駄が多い。正直なところ、前作の方がこの監督の持ち味である戦闘シーンのユニークさを無駄無く生かしていたと思うが、監督が新しい挑戦をしたいというのだから仕方がない。

ヤクザ役の遠藤憲一、松田龍平は海外映画初挑戦だがいつもながらの安定した演技。ただし彼ら日本勢は肝心の戦闘にはほとんど参加せず、アクションについては顔見せ程度で残念。

東南アジアの伝統武術シラットを駆使した格闘はあいかわらずの迫力で、カメラを横倒しにしたり振り回したりと独特のカメラワークも絶好調。

こちらも初挑戦のカーチェイスでは、窓から乗り出した人間の頭を地面やトラックが削るといった、痛み丸まるわかりの斬新なショットも楽しめる。この場面は香港の名物スタントマン、ブルース・ローのチームがシーン設計を行った。監督がこだわったのは、車内の人間がうけるGの表現だという。視点がさすが、非凡である。

今回強く思ったのは、この監督のアクション映画は、おそらくイコ・ウワイス以外の誰が主演しても客を集めることができるだろうということ。主演のアクションスターではなく、監督の名前で客を呼べる。それは貴重なことだ。だが同時に、脚本が弱いという弱点も明らかになった。

もしこういう人が人材の宝庫ハリウッドに行ったら、そうした弱い部分をいくらでもカバーできる。おそらく、相当いいものを作るだろう。期待を持って見守りたい。



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