「ヲ乃ガワ-WONOGAWA-」55点(100点満点中)
監督:山口ヒロキ 出演:前田希美 及川奈央

勇気あるラストと及川奈央の温泉シーン

SF作品「ヲ乃ガワ-WONOGAWA-」は、低予算ながらなかなかよくできたディストピアものである。

21世紀におきた、大崩壊と呼ばれるカタストロフィを経た31世紀。残存する人類はそれぞれ小さなコミュニティで暮らしていた。ある温泉地に建設された小国家「ヲ乃ガワ」の考古学者・月山ヲノガ(前田希美)は禁じられた前文明の遺跡調査中、古い携帯電話と画像データを発見する。だがそのとたん、彼女たちは命を狙われ始めるのだった。

おそらく映画はハリウッド作品しか見ない、なんて人がこれを見たら仰天するほどチープに見えることだろう。

最近は映像のエフェクトや色調整が簡単にできるようになったので、いかにもなビデオルックにはならないし、要所要所ではそれなりにスケール感のあるアクションシーンも作れる。それでも「ヲ乃ガワ-WONOGAWA-」は、あえてチープさをかくさず、逆に共感に変えてしまうところがゲリラ的でおもしろい。

具体的には前田希美演じるヒロインが常に引き連れている、携帯型の家来ロボットあたりがそれにあたる。中にスーツアクターが入っていて変な動きをしているだけなのだが、C-3POの例を挙げるまでもなく、こういうキャラクターを映画のメイン的立ち位置に持ってきて、しかも好感度をあげてしまうというのも簡単そうで難しい。

それともうひとつ褒めたいのは、前田希美と及川奈央のダブル温泉入浴シーン。これは本作が温泉地のご当地映画である以上、だれもが最初から期待していた点といえる。

とくに及川奈央33歳の、衰えしらずのプロポーション&横胸の豊かさには全お父さん大喜びだが、惜しむらくは映画ジャンルゆえか、露出があと一歩という点であろう。もし仮に、二人とも全脱ぎしていただければ、ここは100点を付けざるを得ないところであったのだが……。いつもながら大げさな超映画批評である。

さて、それはともかくこの映画で一番の見どころは、なんといってもラストである。じつはこの映画の語りどころはこの結末についてがほとんどで、ネタバレせずに魅力を伝えるのは難しい。

慎重にお伝えすると、この結末は人間について言及しているが、それは間違いなく福島、の比喩であろうということ。人間と同じように、町にもここで言及している機能がある。とすると、ここでいう大崩壊が何を意味するのか、だれの目にも明らかでなろう。

それをふまえてあのラストショット、ヒロインの選択の行方をみると、実に含みがあってすばらしい。

着ぐるみロボがウロウロ歩く、能天気すぎるルックスで油断させておいて山口ヒロキ監督、なかなかのウルトラCを見せてきた。この大胆不敵さ、このテーマに言及した勇気を失わずに、さらなる娯楽作を追及してほしいものである。



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