「ポリス・ストーリー/レジェンド」65点(100点満点中)
監督:ディン・シェン 出演:ジャッキー・チェン リウ・イエ

警察アクションというより犯罪サスペンス

前作において、スタントが売りの映画は卒業したと宣言したジャッキーチェンが、よりにもよってスタント、アクションの極みといってよいポリスストーリーシリーズを次回作にする。アクション抜きであれを作るのか? だとしたら何とも過激な挑戦といえる。

クリスマスの北京。仕事人間の刑事ジョン(ジャッキー・チェン)は、半年ぶりに会った愛娘ミャオ(ジン・ティエン)の豹変ぶりに動揺する。退廃的な服装、メイクな上、怪しげなクラブのオーナー(リウ・イエ)を恋人と紹介する。さらに店内の揉め事に巻き込まれたジョンは、そのまま昏倒してしまうのだった。

最初から何かがおかしい、ファンが知るポリスストーリーシリーズとは何もかも違う最新作である。コミカルな動きは無く、功夫も激しいスタントも少ないが、その分ジャッキーの演技で見せる。かつて「新ポリス・ストーリー」(93年)なる同様のシリアスな作風のものもあったが、シリーズとは無関係な作品に無理やりそんな邦題をつけたと聞く。はたして本作はどう展開するのか。

クラブハウスに閉じ込められ、そこだけでドラマが進むこぢんまりした屋内劇にはおもわず調子が狂うが、どうやらジャッキー演じる刑事は過去のある事件における逆恨みでここに拘束されたことがわかる。

やがて集められた事件の証人が矛盾する発言を重ねていくなど、羅生門スタイルで真実が二転三転するストーリー自体は意外にも見ごたえがある。

やがて悲しすぎる真相を予感させる独特のシリアスな雰囲気も悪くなく、年を重ねて重み有る動きと表情ができるようになったジャッキーの味は、十分に堪能できる。

通常の刑事アクションプラスアルファ程度の見せ場は用意されているし、期待すべきところを誤らなければ悪くない一品。

わが子を守る役柄というのもずいぶん珍しいし、攻撃を受けてのびてしまったり、なんとか勝っても無様だったり。けっして無敵ではない人間ジャッキーの新たなる挑戦を、ファンは見守っていきたい気持ちになるのではないだろうか。



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