「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」45点(100点満点中)
監督:星野和成 出演:伊藤淳史 仲村トオル
映画らしさがほしいところ
映画とテレビの違い。それをすっきり説明するのは難しい。映像作品という点では同じであり、アメリカと違って日本の場合は出ている役者もほぼ同じだ。だが両者を並べると、やはりどこか違いがあるわけである。
東城医大の田口(伊藤淳史)と厚生労働省の白鳥(仲村トオル)も参加する、日本初のオートプシー・イメージング(Ai)センター発足プロジェクト。それは死因究明を巨大なMRI「リヴァイアサン」の画像などから、これまでにない精度で行うというものだった。ところがそのオープンに合わせ、センターを標的とする犯行予告が届き、関係者は騒然となる。
竹内結子と阿部寛共演の映画版から始まった海堂尊原作の医療ミステリドラマだが、こちらは2作品つくられた映画版とは異なり、同時進行で人気を博したテレビドラマ版の映画化となる。
奇しくも同じ原作を、テレビと映画、両方のフォーマットで映像化。しかもテレビ版の最終作が映画として公開されたことで、冒頭の疑問の答えがかいま見える。
というのも「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」は一見立派な大作映画で、本物の戦車まで画面に登場したりするのだが、やはりどこか「テレビ」なのである。いろいろな大人の事情でお金を取る劇場公開となってはいるが、やはりこれはモニターでみるための作品の域を出ない。あるいは、お茶の間に合わせてチューニングされた映像作品といえるだろう。
たとえば豪華キャストも、いかにもスケジュールをがんばってあわせました感が否めない。少なくともそれぞれがしっかり絡み合い、演技合戦を見せるというものではない。
主要キャラを演じる二人も、キャスティングや演技がテレビ用にあわせてあって、目を引くわかりやすさはあるが、全体的に軽薄である。かしこまって映画館の椅子で見ていると、ギャグも切れていないし、全体的に安っぽく感じる。唯一スクリーンに映えたのはジェネラルルージュを演じる西島秀俊で、これは映画版の堺雅人よりも力強かった。
ミステリ小説を映画のクォリティに高めるのは難しいのだが、本作もその例にもれない。犯人はどうみても刃傷沙汰を起こすのがせいぜいに見えるし、かといってそれがミスリードの為とも言い切れない。役者が演技だけで説得力を出せていないのである。トリックの必然性も薄く、労力を考えたら割が合わない。そう感じさせてしまうのは、予算、製作期間、その他作り手の責任でもあろう。
原作者肝いりのAiについては、大いに興味を持たせる面白い題材だが、それでもスペシャルドラマ程度にしておいたほうが評価されただろう、と思わせる出来映え。
映画とテレビの違い、難しさを感じさせる一品であった。