「ネイチャー」60点(100点満点中)
監督:パトリック・モリス

BBCのすごみを感じさせる

撮影期間573日! とこの映画の宣伝文句にある。そんなに長期間かけて集めた貴重な映像素材の数々──といいたいのだろうが、私にいわせれば話は全く逆だ。573日かけて撮影したことが凄いのではなく、これだけの映像素材をたったの573日間で集める能力、それこそがBBCの凄味なのである。

ジャンルは文字通りネイチャー系ドキュメンタリー。「ディープ・ブルー」(2003)、「アース」(2007)などこの分野のトップランナーであるbbcが、2トン以上もの4K、5Kカメラ&3D機材を駆使して世界中で撮り集めた動物たちの生態だ。

映像こそすべての映画だから、内容をここで書き連ねてもどうにも魅力が伝わるはずはないのだが、印象深いものを紹介するならたとえばワニ。ネット動画なんかでは猫にも勝てないヘタレ動物のレッテルをはられているが、本作のそれは違う。怪力とローリング攻撃で、巨大な草食動物が犠牲になる。恐ろしい光景である。

ほかにもライオンが子象をおそう様子とか、「そこでそういうショットをみたいよ」とこちらが思うものを、過不足なく見せてくれる。

もっともそれは、映画がこちらの期待というか予想を越えない範疇に収まっているとも言えるわけだが、考えてみればそのどれ一つとして、素人では一生かかっても出くわさないシャッターチャンスである。

それを限られた予算と撮影期間で的確に集めてこられるノウハウを持つのは、おそらくBBCくらいなもの。そこが何よりこの映画で驚かされることだ。

5Kの3D映像ということだが、半端ではない高精細さであり、とくに海の波とか、水関連で如実に感じられる。

もっとも音響効果はまだまだで、いちいちマンガ的な効果音をつけたり、音楽と滝クリのナレーションが邪魔だなと感じるところがある。その意味では、疲れたサラリーマンが幸せな仮眠のために使える映画ではない。

字幕がない点は、小さな動物好きの幼児でも楽しめるという点で評価できる。

まとめとして、多少の演出過剰な点はあれど、映像面ではこの手の映画に期待されるすべてがつつがなく提供されている。それだけは保証できる。



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