「リベンジ・マッチ」80点(100点満点中)
監督:ピーター・シーガル 出演:ロバート・デ・ニーロ シルヴェスター・スタローン

まさかの共演によるボクシング映画

「ロッキー」や「ランボー」の新作をとってみたり、忘れられていたベテランアクションスターを集めてオールスターな作品を作ってみたり。最近のシルヴェスター・スタローンはハリウッド一、サービス精神旺盛な企画に絡んでいる。

そんな彼の最新作「リベンジ・マッチ」もその一つ。なんと、体重増加の役作りが伝説となった「レイジング・ブル」(80年)のロバート・デ・ニーロとふたり、因縁あるライバルボクサーを演じて初共演する離れ業をやってのけた。

80年代に一世を風靡したボクサーのビリー(ロバート・デ・ニーロ)とヘンリー(シルヴェスター・スタローン)。対戦成績五分のまま迎えた第3戦直前にヘンリーが引退したことをビリーはいまだに根に持ち、ヘンリーもまた別の因縁から二人は犬猿の仲となっていた。そんな二人に目を付けた売り出し中のプロモーター、ダンテ(ケヴィン・ハート)は、30年ぶりに二人を対戦させようという無茶な企画を考えるが……。

67歳のスタローンがまさかボクシング映画の新作でボクサーを演じるなどと、誰が予想しただろう。まして70歳のデニーロを引っ張りだし、リングにあげてしまった。とんでもないことだ。

映画はコメディー色強く始まる。それも年寄り自虐ネタ、自作のパロディネタを惜しみなく投入。デニーロほどの名優がこうした企画に出張ってくれたことも、ベテランの余裕を感じさせて好感が持てる。

出てくるキャラクターの口の悪さも常軌を逸したレベルで、よくぞこんな突飛な罵倒、悪口をこの脚本家は思いつくものだと感心させられる。前半はもう、今年一番といっていいほどに笑わされた。

この勢いを殺さぬうちにドリームマッチ=試合シーンに入ってくれれば良かったのだが、瞬発力が高すぎて中盤からギャグに行き過ぎ感を感じてしまう状況になったのは残念。

それでもリング上の二人は期待以上の動きを見せる。何よりこの年齢でよくぞここまで身体を作ったと思う。スタローンなどは本当に生き生きとしていて、かつてのロッキーそのものの動きを見せる。往年のファンとしては、胸熱くさせられるだろう。試合の行方も納得のおとしどころで、さわやかな感動がある。

それにしても、堂々と裸になった二人はスゴい。ここは素直に拍手を送るほかあるまい、ちなみにエンドロールもサービス満点。ボクシングファンはきっとびっくりすることだろう。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.