「ローン・レンジャー」50点(100点満点中)
The Lone Ranger 2013年8月2日(金)全国公開 2013年/アメリカ/カラー/149分/配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
監督:ゴア・ヴァービンスキー 製作:ジェリー・ブラッカイマー/ゴア・ヴァービンスキー キャスト:アーミー・ハマー ジョニー・デップ へレナ・ボナム=カーター

海賊の夢、再びとはいかないか

米映画業界には、長らく「海賊映画は当たらない」とのジンクスがあった。その最たるものが「カットスロート・アイランド」(95年、米)で、100億円超の製作費に対し興収わずか10億円。あわれ製作会社は倒産、冗談みたいな損失額は、ギネスにまで載った。

それを「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズで覆したのがゴア・ヴァービンスキー監督とジョニー・デップだったわけだが、「ローン・レンジャー」はそれと同じことを西部劇ジャンルでやってやろうという意欲作である。二人にとっては前作「ランゴ」(11年、米)も同じジャンルであり、これは満を持しての実写大作ウエスタン、ということになる。

正義感あふれる郡検事ジョン(アーミー・ハマー)は、無法者ブッチの凶弾に倒れたところをインディアンの悪霊ハンター、トント(ジョニー・デップ)の怪しげな術に救われる。ジョンは死んだこととし、マスクをかぶったローン・レンジャーとなった彼は、トントにとっても不倶戴天の敵であるブッチを追いかけるが……。

ジョニー・デップの役作りは、海賊や帽子屋やチョコレート男などと同じ、基本的にはいつもと同じチャーミングな変人キャラ。白塗りメイクがよほど好きな彼は、02年生まれの息子がもう少し大きくなってこの手の映画を見なくなるまでは、きっとこのキャラを続けることだろう。頭にカラスの死骸を乗せるアイデアは、彼自身によるものだそうだ。本作ではギャラ減らしの憂き目にあいながらも、相変らず楽しげに演じているように見える。

この映画は彼と、アーミー・ハマー演じる主人公のバディムービーで、冗談をはさみながらピンチを乗り越えていくアクション映画である。大列車強盗や銃撃戦といったこのジャンルの定番ながら、そのスケール感たるや度肝を抜くようなものばかりで、現代のハリウッドムービーそのもの。

古くはラジオドラマから始まった日本でもおなじみの懐かしのキャラクター映画ではあるが、この「現代っぽさ」はそうした往年のファン、あるいは西部劇ファンにとってはなかなか受け入れがたいものであるに違いない。

海賊映画は金がかかる欠点があるがもともと独特の面白さがあり、忘れられていたそれを掘り起こすことで彼らは成功を収めた。しかし、西部劇とはその魅力、様式美すべて周知のものであるから同じようにはいくまい。子供たちに見せるには上映時間の長さもネックになる。間延び感は否めない。

見に行く際は、エンドロールの途中におまけがあるので見逃さないよう。



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