「G.I.ジョー バック2リベンジ」30点(100点満点中)
G.I. Joe: Retaliation 2013年6月8日(土)TOHOシネマズ スカラ座他、全国3D&2D公開! 2012年/アメリカ/カラー/110分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
単発見せ場を断続的に見せるサーカス映画
日本でG.I.ジョーといえば、オジサン世代にはなじみ深い多関節人形のおもちゃだが、アメリカでは特大ヒットとなった実写映画版前作のこと。その世界観を引き継いだこのパート2は、だから日米の観客が受ける温度差がさらに広がった。
国際テロ組織の一員が米大統領になりすます奇手により、機密部隊G.I.ジョーは壊滅的被害を受けた。ロードブロック(ドウェイン・ジョンソン)ら数名の生存者は、G.I.ジョー初代長官のジョー(ブルース・ウィリス)らの支援を受けなんとか態勢を立て直そうとするが……。
トランスフォーマーやらアイアンマンやら、世界を守る存在が多すぎてG.I.ジョーなんてとっくに記憶の彼方に飛んでいるのが、平均的日本人観客の姿であろう。前作と同じ世界観といっても、4年も前に見たっきりの続編ともなれば、それを思い出すのだけで無駄な時間を取られるというもの。
そんなときにこのマッチョ集団が壊滅的被害を受けたといっても何の衝撃もないし、意外性もない。ライトなファンはいきなりおいて行かれる冒頭、である。
ドウェイン・ジョンソンら生存メンバーが、苦しい旅を経てようやく武器を見つける場面などは、武器不足で苦しむ描写がないから発見の快感も薄くありがたみがない。せっかくの各銃器の解説にあたる演出もないからこれまた迫力を感じにくい
かように、演出面での準備不足のまま見た目だけは派手なアクションシーンが繰り広げられる強引ぶりにはあきれるが、お金がかかっているのでそれはそれで確かにすごい。ただししょせんは単発のサーカス芸なので、フーンとうなづいて終わる程度のものだ。
これでも脳みそが単純化したアメリカ人になら受けるのだろうが、日本人にとってはさらにとほほな展開が続く。たとえば忍者の里のセットは、新宿あたりによくある意味不明な和風造語の店名がついたぼったくり個室系居酒屋を思わせるチープさ。そこに日本人は見当たらずどうみても韓国人だけというのがまた泣かせる。テキトーにもほどがある。
イ・ビョンホン演じる白忍者とマッチョな黒忍者の確執とバトルも、殺陣の技術不足と鈍重な動き、無駄な筋肉量のせいでどこかトロい。
この調子で3本目も作るのかと思うと、期待はしぼむ一方である。ザ・ロックとイ・ビョンホン。太いのと細いの、対照的な筋肉美を楽しむくらいしか楽しみがないのでは、製作費123億円(絶賛急降下中のアベノミクス円高レート換算)が泣く。少しは日本市場もまじめに考えて作れと言っておきたい。