「ストロベリーナイト」40点(100点満点中)
2013年1月26日公開 全国東宝系 2013年/日本/カラー/??分/配給:東宝
原作:誉田哲也 監督:佐藤祐市 脚本:龍居由佳里、林誠人 出演:竹内結子 西島秀俊 三浦友和(友情出演) 大沢たかお
水準以上のテレビドラマ映画ではあるが
たとえテレビ畑の人間だろうが、ひとたび映画で高い評価を受けたからには映画監督としての誇りを持つのは自然なこと。そうした評価を一度でも受けた人間なら、テレビドラマの映画化を依頼されたとしても、そりゃ相当頑張るに違いない。
佐藤祐市監督(「キサラギ」(2007)ほか)の「ストロベリーナイト」を、私はそんな期待感を持って鑑賞した。
男勝りの警部補、姫川玲子(竹内結子)が所属する警視庁捜査一課の管轄内で連続殺人事件がおきた。被害者が暴力団構成員だったことから組織犯罪対策第四課(=広域暴力団対策を任務とする)と捜査会議を開いたものの、荒くれぞろいの四課からは小娘扱いされ疎まれる始末。そんな姫川は、偶然にも犯人を名指しする匿名のタレこみ電話を受ける。だが警察上層部は、その情報に対し不可解な動きを見せるのだった。
佐藤祐市監督は明らかにこの作品で、テレビではなく映画ならではの楽しみ、希少価値を出そうと様々な工夫を凝らしている。
それは、お茶の間には少々残酷すぎる、というよりリアルな死体描写だったり、全編を雨で彩る贅沢かつ色っぽい絵作りだったり、主演:竹内結子の濡れ場だったりする。そうした、無料のモニタでは見られないものというのは確かにこの映画にはあって、それなりに効果も上げている。
ただ、それでも本作はテレビの2時間スペシャルドラマを映画館で流しているような、そんなこぢんまりした印象を受ける。
ストーリーはシリーズ内でも定評ある「インビジブルレイン」をたたき台にしたものだし、演じるキャストも芸達者、人気者がそろっている。先ほど書いた通り佐藤監督のやる気も手腕もそこいらのテレビ邦画とは一線を画する。なのになぜ、「ストロベリーナイト」は映画らしさにかけてしまうのか。
これが難しいことに、致命的な原因が見当たるわけではない。ただ、先ほど書いたような描写へのこだわりはテレビ版でもあったもので、この程度ではまだまだインパクトに欠けるというのはあるかもしれない。そして、そうした丁寧な映像面に比べてストーリーの完成度が追い付いていない印象も受ける。たとえばヒロインがあの男に惹かれる理由づけも、映画版だけでは十分になされない。ここはこの映画の中でもっとも重要な心情描写のはずである。
演じる竹内結子も、監督がこれだけ頑張っているのだから率先して映画らしい激しい濡れ場をやればいいのに、そのシーンだけは相変わらずの清純仕様。雨に濡れるイメージショットでヒロインの変化をほのめかす演出は良かったし、寝取られ好きの心をくすぐる「観察者」の動きもまあまあだった。
だが、主演女優ならばここは自分の演技ひとつで「これはテレビとは違うのよ」を表現してほしいところ。そこまでやってこそ「興収30億を目指す」などという大口も許されるのだ。ここは心を鬼にして、猛省を促したい。許されたかったら次はもう1,2枚は脱ぐように。