「テッド」45点(100点満点中)
Ted 2013年1月18日(金) TOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー 2012年/アメリカ/カラー/106分/配給:東宝東和
監督・脚本・製作・声の出演:セス・マクファーレン 出演:マーク・ウォールバーグ ミラ・クニス
お下劣テディベア
全世界の子供たちに愛されるテディベア。あの、もふもふの可愛らしいぬいぐるみとおしゃべりできたらどんなに幸せだろう……。そんな子供たちのささやかな夢が実現する「テッド」は、しかしブラックジョークたっぷりの、決して夢見る子供たちには見せられないきつい一本だ。
少年時代に奇跡が起こり、大好きなぬいぐるみのテディ(声:セス・マクファーレン)と文字通りの親友になれたジョン(マーク・ウォールバーグ)。だが、片時も離れず27年経った今では、テディは不良中年と化し、ジョンも引きずられてダメ人間に成り下がっていた。
持ち主もテディベアも中年になり、毒舌お下品なやりとりを繰り広げる。見た目のかわいらしさとしゃべりのアンバランスに、おもわず顔をしかめながらも笑ってしまう、インパクト抜群のコメディ映画だ。
子供たちの祈りの強さとアパッチヘリを比べるくだらない冒頭から大爆笑で、こいつは期待通りのおもしろさかと思わせる。ひわいな放送禁止用語も辞さぬぶっ飛びぶりに、イケイケどんどんやれやれと盛り上がる。
しかしながらその勢いはまもなく失速。中盤以降は試写場内からも笑いが消え、むしろ失笑へと変わった。
コンセプト自体はよかった。80年代カルチャーにハマったものたちが、そのイタかゆい過去を少々自虐的に、しかし愛を持って回顧する。実にわかりやすい。ただ、無理をしていろいろ詰め込んだ割には、アイデア不足で息切れ感を感じさせる。
たとえば映画版「フラッシュ・ゴードン」(80年、米)が中盤以降のメインネタになるのだが、サプライズゲスト?を登場させて笑わせるものの、これがパワー不足。一発ネタとしてはいいが、ことごとく引っ張りすぎている。
テディベアがお下品で、ヤクまでやってる過激設定にしたはいいが、それだけでは場をもたせられず、追加で映画マニア設定をくっつけたものの、それでも持たず……といった感じ。見ているこっちがつらい。
また、この作品を見ると、映画マニアが世間で嫌われるのは、この妙な仲間意識というか、わかる人間同士で過剰に盛り上がる気質にあるのだとよくわかる。
とりあえず、フラッシュ・ゴードンネタがわからない彼女を連れていったりすると致命的なトラブルの元となる恐れがあるので要注意。日本においてこの映画は、わかる人同士でこっそり楽しむ性質の作品だ。
ところが、こいつをスカラ座で公開するというのだからこの映画会社は勇気がある。一部には受けるだろうが、それでも渋谷あたりのミニシアターでレイトショーが妥当なセンじゃないの、というのが正直な印象だが。
日本語版字幕についても、意訳したギャグがことごとく寒々としていて残念。ただしこの点は、もともと難しい作業だったと思うので同情する。
やはりこうした作品は、アメリカ文化に詳しい人たちが、現地の言葉で楽しむのが王道である。そんなごく当たり前の感想を思わずにはいられなかった。