『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』20点(100点満点中)
2010年4月17日公開 全国東宝系ロードショー 2010年/日本/カラー/123分/配給:東宝
原作:二ノ宮知子 監督:武内英樹 脚本:衛藤凛 製作:フジテレビ 出演:上野樹里 玉木宏 瑛太 ベッキー 谷原章介
1話逃さず見ていたファンならもっと評価アップだとは思うが……
人気ドラマの完結編は、映画館にて有料でご視聴いただく。広告不況であえぐテレビ局の苦境がしのばれる苦渋のビジネスモデルである。しかも『のだめカンタービレ』の場合は、その映画版が前編後編と分かれている。当然、入場料も二回徴収されることになる。ファンの懐にとっても、テレビ局と不況気分を共有できる仕組みである。
はたして『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』は、二本の映画に分ける必然性があったのか。今回私はそこを重要ポイントとして鑑賞した。(以降、前編のネタバレを含むのでご注意ください)
野田恵ことのだめ(上野樹里)と千秋(玉木宏)はいったん別居し、それぞれの道を歩むことになった。だが千秋との共演どころか、いつまでたっても課題曲にOKが出ないのだめは、一人で焦りまくる。これに対し千秋は、Rui(山田優)との共演が決まり張り切っていたが、その演目がやがてのだめとの関係に致命的なショックを与えることになる。
ギャグは控えめ、ほぼシリアスなラブストーリーが展開される。のだめのあのバカキャラで、これをやるのはかなりの冒険であっただろう。やがて話が進むと、おなじみのキャラクターたちが次々集まってくる。いやおうなしに、ああこれで終わりなんだなと感じる最終回ムードである。最後にはのだめと千秋の恋の行方にも決着がつく。
これではドラマの視聴者は見ないわけにはいかない。憎たらしいが、お財布を不況にするほかあるまい。
だが、それにしては内容が薄すぎやしないか。123分の堂々長編だが、ストーリーも堂々巡り。さっさとくっつけばいいものを、この期に及んでまだ行ったり来たりするのだからイライラする。しかも、どう見ても上映時間を埋めるためだけに作ったような、お定まりの恋の障害エピソードで、新味もなにもありゃしない。
ダメオーケストラを再生する前編の方が、まだ映画らしい主軸があった。だがこの後編で主人公二人がやっていることには、ドラマ1話分程度のボリュームしか感じない。そんな、前編の残り材料で作ったような物足りない内容でも、ファンは見ないわけには行かない。二部作ならではの、強烈なジレンマである。
海外ロケにしても、大編成のオーケストラシーンにしても、すでに前作でみな目にしている。後編をつくるなら、それ以外に何か見せ場がほしい。これでは後編を20分に縮めて、前編にくっつけて1本にしたほうがよかったのではないかと、嫌味のひとつもいわれよう。この記事では20点だが両方あわせれば75点、まあこんなところではないか。