『ニューオーリンズ・トライアル』85点(100点満点中)
緊張感が途切れぬ良質なサスペンスドラマ
見応えのある法廷サスペンスもの。演技派で知られる2大スターがはじめて競演した。
さて、法廷劇といえば、根強いファンが存在する定番ジャンルであるが、この『ニューオリンズ・トライアル』は、ちょいと趣向が変わっている。通常このジャンルは、法廷での弁護士と検事(もしくは敵側弁護士)の激しいバトルというのがメインのお楽しみだろう。もちろんそれはそれであるのだが、本作では一方の陣営に、陪審コンサルタントなる聞きなれない職業の人物が登場する。
アメリカの裁判は陪審制(12名)で知られるが、多数の陪審員候補者の中から、自陣営に有利な陪審員を調べるのがこの専門家の役目だそうだ。この職種自体は実際に存在するものだが、映画の中では盗聴やら盗撮、尾行などの裏工作を駆使して候補者の思想・心理等を調べ上げ、自分たちの陣営に有利な陪審員を選び出す過程が興味深く描かれる。
その様子はまるでNSAやCIAの秘密工作のようだ。腕利きの陪審コンサルタントは、弁護士以上の権力を持ち、裁判を有利に進行させる。そんなわけで『ニューオーリンズ・トライアル』での被害者の代理人(弁護士)の最大の敵となるのは、敵側の陪審コンサルタントという事になっている。彼らの対決は主に法廷外で行われるため、この手の法廷ドラマとしてはとても新鮮だ。陪審コンサルタントがその実力を見せ付ける「陪審員選択」の場面は、けれん味たっぷりの演出が施され、大きな見所となっている。
さらに、このドラマでは「被告VS原告」といった通常の構図に加え、謎の陪審員という第3の勢力が加わっている。この男が実に怪しげで、行動からはどちらの見方なのか、なかなか読みきれない。この謎めいた男は、被害者の弁護士のみならず、その敵である陪審コンサルタントさえも大きく翻弄する。この男の存在のおかげで、サスペンス映画として先がなかなか読めない展開となっており、観客の興味をラストまで引っ張ってくれる。
ストーリーはよく整理されており、法律の専門知識の無い観客でも問題なく楽しめる。字幕による鑑賞でも混乱せずに見ることができるだろう。
途中で緊張感がまったく途切れず、つまらない部分はまったくない。ラストもさわやかで、見た後も気分良く劇場を後にできる。法廷ドラマにあまり慣れていない人でも気軽に楽しめる、良質で娯楽性の高い一本である。今週はぜひこれを見てほしいと思う。