コードネーム「Y」“極秘の薬品捜査”を捜査員が証言 松本サリン事件から30年【現場から、】|TBS NEWS DIG

シリーズ「現場から、」です。松本サリン事件でオウム真理教の関与を特定するに至った警察による極秘捜査を、当時の捜査員が証言しました。

長野県松本市の住宅地で発生した松本サリン事件。オウム真理教が噴霧した神経ガス=サリンにより8人が死亡し、重軽症者はおよそ600人に上りました。

神経ガスの正体が判明したのは、発生から6日後。

当時の捜査第一課長
「その物質はサリンと推定される」

長野県警の元捜査員・上原敬さん(69)。理系の大学出身で当時、薬品捜査班のメンバーとして、サリンの生成に必要な薬品の入手経路などを突き止め、オウム真理教に迫りました。

薬品捜査を担当 上原敬さん
「(サリンを)どうやって作るのか、作るためにはどんな薬品が必要なのか。薬品はどこで売られていて、誰が買っているのか。これを解明していけば、サリンを作った人間がわかるんじゃないかと」

上原さんは化学式を逆算するなどして、サリンは5つの工程から作られると道筋を立て、ある薬品に注目しました。

薬品捜査を担当 上原敬さん
「メチルホスホン酸ジメチルという物質。試薬瓶のようなもので売られていたが、中に何本も買っている人がいた」

全国の薬品会社や大学の研究室などを回り、販路をたどる地道な捜査を続け、不審な人物と会社が浮上します。

薬品捜査を担当 上原敬さん
「大量に一時的に買うんですけど、(薬品会社と)取り引きがありませんよと。何を作っているのかわからない」

事件発生からおよそ3週間、たどり着いたのは東京の世田谷にあったオウム真理教の道場でした。

教団への捜査を隠すため、長野県警は道場近くの山下駅の頭文字から、コードネーム「Y」として極秘に進めます。

調べを進めると、オウム真理教が4つのダミー会社を通じて、サリンを作るための薬品を大量に購入していたことが判明。しかし、強制捜査は行えませんでした。

薬品捜査を担当 上原敬さん
「薬品に禁制品がなかった。(当時)直接取締りができるようなものではない」

その後、翌年の3月に地下鉄サリン事件が発生。ただ、長野県警がオウム真理教にたどり着いていたことから、警視庁との合同捜査で実行犯の特定につながりました。

容疑者の取り調べも行った上原さんは、教団が70トンのサリンを作ろうとしていたことを知りました。

薬品捜査を担当 上原敬さん
「日本は終わっちゃうなと思った。捜査での貢献はできたと思う」

世界で初めて市街地が標的とされた化学テロ=松本サリン事件。極秘の薬品捜査がオウム真理教信者による犯行を突き止めたのでした。

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