「トゥレット症」という難病をご存じでしょうか。この病気は、自分の意思に反して突然声が出たり、自分の動きを制御できなくなったりする特殊な症状が出ます。今回、患者の女性を取材しました。彼女が訴えるのは「温かい無視」です。福島県郡山市で事務職員として働く福永美桜さん(仮名・36)。数十秒に1度、その症状は現れます。「オウッ」出そうと思っていないのに、突如出るうめき声。自分の意思で、自分の体の動きを抑えることはできません。彼女は、難病「トゥレット症」と闘っています。井上和樹アナウンサー「今歩いているときに前のめりになりましたが、これも症状の1つですか?」
福永さん「これも症状の1つです。転んでしまう時もある。」急に体がけいれんしたように動く症状は「運動チック」。声や言葉が突然出てしまう症状は「音声チック」と呼ばれます。この2つの症状が1年以上続くと「トゥレット症」と診断されます。福永さんの症状は、仕事の際、大きな障害に…。「ガチャッ」福永さん「電卓を叩くのはやっぱりどうしても体が動くので、間違えたり最初からやり直したりする」
病気のつらさは「周りからの偏見」
パソコンで文字を打つのも一苦労です。「ガチャガチャッ」福永さん「打ちたい文が打てない難しさがある。受け入れながらやっています」福永さんを悩まし続けるトゥレット症。郡山市にある星ヶ丘病院の大野医師は、彼女の主治医を務めています。星ヶ丘病院・大野望診療部長「大脳の基底核(神経細胞の集まり)にあるドーパミンの神経系の異常ではないかと言われている。(ここ2~3年で)350~360人の患者さんを診ているが、彼女だけなので珍しい病気だと思う」井上アナ「トゥレット症には治療法はあるんですか?」
星ヶ丘病院・大野望診療部長「完全に治す治療は残念ながら今のところ無いと言われている」福永さんに、症状が出始めたのは小学2年生の頃。その後、中学1年生の時に「トゥレット症」と診断されました。福永さん「やっぱり(病気だと)分からないで、みんなの前で笑われてしまうことが結構あった。闘いの始まりという感じでした。誰も(病気のことを)分かる人もいない。症状が次から次へと出て、自分でも本当にわけが分からなかった。」この病気の辛さは「周りからの偏見」だと訴える福永さん。特にバスを利用するときにその辛さを感じると言います。福永さん「なるべく後ろの方に座っているが、それでも(症状が出ると)見られてしまう。すごく辛いし悔しいし『病気なんだよ、これは』と声を大にして言いたい」
「トラブルになるかも…」就職活動にも影響
病気への偏見は、就職活動にも影響を与えました。福永さん「今の会社に就くまで9社ぐらい面接がダメだった。断る理由で『トラブルになるかもしれない』と言われたことがあって、自分の好きな職種だったのでショックだった。」福永さんは、この春今の職場に採用されました。病気を理解し、本当の自分を受け入れてくれる同僚の存在に、福永さんも頬を緩ませます。福永さん「チックを出す出さない関係なく皆和気あいあいでにやけてしまうぐらい充実していて、本当に周りに感謝しかない」同僚たちも、1人の職員として彼女の能力を評価しています。福永さんの同僚「病気ある無しに関わらず、彼女を知っている人は真面目でちゃんとできていると評価している」福永さんの同僚「(症状は)気にならない。普通にお仕事もできているので問題はない。もっと広く(トゥレット症が)一般に理解されたら良いなと思う。」もし、街中でトゥレット症の人を見かけたらどうしてほしいか。福永さんからは意外な答えが返ってきました。福永さん「トゥレット症の人を見かけたときは見ても構わないんです。トゥレット症なのかなとか、病気でこういう症状が出ているのかなとか、温かい無視をして頂ければすごく当事者は生きやすくなると思う」【取材後記】TUFアナウンサー 井上和樹
今回、福永さんは「トゥレット症についての理解が広がってほしい」という思いで勇気を持って取材に応じてくれました。取材を通じて治療法が見つからないことよりも病気への偏見がトゥレット症患者を苦しめていると分かりました。
この病気への理解が深まって福永さんがおっしゃるような「温かい無視」をしてくれる人が増えてほしいと思います。
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https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tuf/655461
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