ロシアによるウクライナ侵攻からおよそ10か月。世界の戦地や紛争地を取材してきたTBS・須賀川記者と今年の"戦争"について考えます。
映画「戦場記者」
角川シネマ有楽町ほか全国順次公開
■戦場記者と“戦争”を考える ウクライナやアフガンは今
小川彩佳キャスター:
今年はウクライナとアフガニスタンを中心に取材をしてきましたが、特に印象に残っている場所はありますか。
JNN中東支局長 須賀川拓記者:
一番印象に残っているのはウクライナのミコライウという場所です。(写真や映像で)私が持っているのはロケット弾に搭載されたクラスターの残骸なんですけれども、このクラスターというのは極めて非人道的な兵器で殺傷能力はもちろん、30%ぐらいが場合によっては不発弾になる。20年30年後、今の戦争を全く知らない世代に生まれた子供たちが、未来で被害に遭うかもしれない。極めて非人道的な要素が強い兵器が投下されていることに非常に憤りを覚えましたし、かなりショッキングでした。
■ガザの外に出ることができない お寿司に喜ぶ人々の悲しい現実
国山ハセンキャスター:
戦場取材の必須道具です。防弾チョッキ、ヘルメット、応急セット、放射能線量計などなど。
須賀川記者:
防弾チョッキについている日の丸ですが、日本は世界各地に多額の援助をしていますから敵対的に見られることが極めて少ないので日本の国旗はつけています。あとは防弾チョッキに必ずつけているこの応急セットは、開けたときにどこに何が入っているかわかるように、カメラマンもセキュリティもドライバーも、クルー全員で同じセッティングをしています。例えば私が凶弾などで倒れた場合、私に付いている応急セットを使いますが、同じセッティングにしておけば開けたときにすぐ処置ができます。応急セットは中身もセッティングも全部同じにするのはとても重要です。
国山キャスター:
寿司酢や砥石を持参することもあるようですが。
須賀川記者:
戦地取材には全く関係ないのですが、初めてパレスチナ自治区のガザに行ったときに彼らが「どうしてもお寿司が食べたい」と言ったんです。私は次回ガザに来たときに必ず作るからと約束して、寿司酢と砥石を持って行って寿司を握りました。彼らは色々な文化を知っていますが、ガザの外に出ることができない。それに触れることができない。和気あいあいとした楽しい雰囲気のなか、彼らの悲しい現実をものすごく感じました。
■壊れたインフラ、奪われた夢・・・終戦後の現場こそ伝えなければいけない
国山キャスター:
ガザのほかにも須賀川さんが度々足を運んでいるのがアフガニスタンです。アフガニスタンは去年アメリカ軍が撤退して20年に及んだ戦争が終結。今はイスラム主義組織タリバンが実権を握っていて、女性の権利抑圧、貧困などが問題となっています。
須賀川記者:
戦争はドンパチしているときは、報道がぱっと集まってニュースが流れますが、終わったあとがすごく大切で、住人はこの壊れたインフラ、奪われた夢、そういった中で自分たちの生活を立て直さなくてはいけない。それがいかに厳しいものかというのを伝えなくてはいけないのに報道がなくなってしまう。これがまず一つ大きな要素。そしてアフガニスタンについて言えばタリバン。彼らの政治は部分的に少しずつ抑圧的になっている部分がありますから、私たちはあなたたちのことを見ているんですよ、世界中は見ていますよというメッセージを伝えることで、少しでも国がいい方向に向いてほしいなという思いで報道は続けていかなければならないですね。
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