【報ステ】「誰もが恐れてる」外国人客が涙“原爆の惨状”大越キャスターがみたG7広島(2023年5月18日)

G7広島サミットを19日に控えるなか、一足先に首脳外交が始まりました。舞台となる広島には、未明から各国首脳が続々と集結しています。

大越健介キャスター:「広島市中心部は、非常に厳重な警備体制が敷かれています。警備車両、あちらこちらに警察官の姿も見えます。特に午後から夕方にかけて、各国の首脳が到着する時間帯、警備が厳しくなっているように感じます」

まさに厳戒体制が敷かれ、陸・海・空から目を光らせます。そして午後5時過ぎ、アメリカのバイデン大統領が広島市内に到着しました。現職のアメリカ大統領が被爆地・広島を訪問するのは、オバマ元大統領以来、7年ぶりです。日米首脳会談は、1時間10分に及びました。

そして、19日に、各国首脳がそろって訪れるのが、広島原爆の惨状を伝える『原爆資料館』です。

大越健介キャスター:「厳重な警備が施されています。こちら、原爆資料館なんですが、普段はここガラス貼りなんですけど、白く覆われています」

サミットのため、原爆資料館は18日正午で、一般見学は締め切りに。その直前まで、各国の観光客が訪れていました。

大越健介キャスター:「何人かの外国人観光客の方に、お話を聞かせてもらえませんかと聞くんですが『ちょっとショックで心の準備ができていません』と答える人、涙ぐむ人、『今、私は言葉が見つかりません』という方もいらっしゃいました」

先月の来館者は16万2802人、そのうち外国人が9万464人と、約55%を占めています。

イラン人観光客:「感極まって涙が止まらず、泣きながら歩いていました。(Q.イランは核開発疑惑があるが、政府をどう評価する)政府と国民を分けて考えてほしい。政府は好き放題やるけど、私たちは違う。平和国家なんです」

台湾からの観光客:「こちらの資料館には、多くの戦争犠牲者について展示されていて、悲しい気持ちになりました。特に台湾は、中国に脅かされているので、戦争の恐怖を感じます」

オーストラリア人観光客:「(Q.広島でG7で開催される意義はなんだと思う)太平洋戦争の記憶が薄れつつある今こそ、世界の首脳陣が集まって、原爆投下という残虐な行為を忘れないようにすることが大事」

インド人観光客:「残念ながら、今の人類は過去から何も学んでいない。(Q.インドの核兵器政策をどう評価している)完全に廃絶すべき」

アメリカ人観光客:「(Q.広島でG7が開催される意義はなんだと思う)広島での開催は、アメリカ人にも原爆投下を連想しやすいし、バイデン大統領も広島を見て、原爆投下の影響を理解すべき。(G7が)広島で開かれてよかった」

【今、被爆者が伝えたい思い】

被爆地で行われる、初めてのG7サミット。その意義の大きさを、ひしひしと感じている人がいます。

原爆投下の時、森重昭さん(86)は8歳で、爆心地から約2.5キロの場所にいましたが、人の陰になっていたせいもあってか、やけどはしませんでした。

森さんは長年、原爆で亡くなった、旧日本軍捕虜のアメリカ兵について調査し、遺族に知らせる活動を続けてきました。

2016年、アメリカの現職大統領として、初めて広島を訪問したオバマ氏と直接、言葉を交わし、抱擁する姿は、世界に伝えられました。

大越健介キャスター:「7年経つが、世界は核兵器廃絶には、なかなか向かっていかない。ウクライナでああした戦争があって、ロシアは核を脅しに使っている」

森重昭さん:「長崎も広島も、一発の爆弾で全滅した。今度、戦争が起こったら、何十発どころか何百発の核と核がお互い応酬して、そうなるとどうなるか考えたら、戦争なんてできるわけがない」

大越健介キャスター:「今、世界の指導者たちは『お前のところもやるならやってみろ。俺のところだって核はあるぞ』と、核を持つことで、むしろ安心ということが当たり前の常識になっている。そこにあるのは怒りですか?悲しみですか?」

森重昭さん:「世界の為政者、国連も含めて、なかなか現実問題として、それを阻止する力をお持ちなんだろうかと。そういう人ができないんだったら、せめて広島を中心として、各国の国民が自分たちでやろう。為政者ができないんだったら、自分たちでやる以外ない。そこは悲しい。それをやるのが為政者じゃないかと」

そう嘆いたうえで、バイデン大統領には、こう呼び掛けました。

森重昭さん:「あなたは世界の運命を握っている人だから。あなた次第で将来、人類が生き延びるかどうか。戦争が起こらないことを強く願っている国民の1人として、あなたにお願いしたい。よろしくお願いしますと」

【“ヒロシマ”世界へ訴えかけるモノ】

広島にいる大越健介キャスターに聞きます。

(Q.広島で一日、取材をして、どのようなことを感じましたか)

大越健介キャスター:「被爆地である広島という場所が持つ、独特の“発信力”の強さを感じました。それは、原爆資料館を訪れる外国からのお客さんを取材していて、特に痛感しました。原爆の惨状を伝える写真の数々、ボロボロの服などの展示物。人々は一様に表情をこわばらせていました。なかには、目に涙を浮かべながら、2時間余りにわたって、展示物に見入っているアメリカ人女性の姿もありました。原爆という一つのテーマが国境を越えて、これだけ様々な国の人たちを釘づけにしているという現実。それは一体、何を意味するのでしょうか。多くの国が抑止力としての核兵器に依存しながらも、一方では核兵器を使うことはあってはならないと恐れを抱いている。その裏返しではないかと感じました」

(Q.被爆地・広島で開かれる、G7サミットの意義をどう感じましたか)

大越健介キャスター:「その意義は非常に大きいと思います。G7の首脳たちは19日、広島の平和公園に集う予定です。そして、原爆の犠牲者たちの慰霊碑に花を手向けるとともに、原爆資料館を訪問します。サミットのテーマは多岐に及んでいますが、首脳たちが全員、原爆の爪痕に触れ、その痛みを共有したうえで議論に臨む。議論の持つ意味が、一層深くなることに期待したいです」

(Q.ウクライナ情勢で、ロシアが核兵器を“威嚇”として使っています。だからこその意義もありますね)

大越健介キャスター:「サミット一日目の19日、首脳たちは早速、ウクライナ情勢をめぐるセッションに臨みます。ロシアのプーチン大統領は、ことあるごとに核兵器をちらつかせ、ウクライナと、ウクライナを支援する国々を威嚇してきました。プーチン大統領に対し、不当な侵略も、核をもてあそぶような言動も決して許されないのだという強いメッセージを発するうえでも、被爆地・広島でサミットが開かれる意義は小さくないと思います。そして今、ロシアの侵攻をめぐって、態度を明らかにしないゆえに、カギを握っていると言われるのが、インドをはじめとする『グローバルサウス』と呼ばれる国々です。これらの国々が自由と民主主義を重んじる陣営と、より距離を縮めるためにも、G7の結束が今ほど求められている時はないと感じています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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