戦闘が続くスーダンでは、各国が様々な手段で国民の退避を進めるなか、現地では国連機関の食糧が略奪されるなど、治安は悪化の一途をたどっています。
自衛隊の輸送機で退避した日本人と、その家族合わせて45人が、ジブチに到着したのは現地時間の午後7時過ぎのことでした。医師のチェックを受けていますが、皆さん健康状態に大きな問題はないといいます。
日本人の退避は自衛隊機によるものだけではありません。フランスの協力のもと、スーダン軍基地からジブチへ退避した人たちなども含めると、合わせて58人(家族含む)が出国しました。今回の退避活動は、外国の協力なしには成立しえないものでした。
松野官房長官:「フランス・韓国・UAEをはじめ、関係各国および国連等関係機関に感謝を申し上げます」
『PROMISE作戦』と題し、外交官や市民28人をサウジアラビア経由で退避させた韓国。ポートスーダンまでは陸路でしたが、韓国外務省関係者によりますと、その道中、日本人5人が同行していました。
首都ハルツームからポートスーダンまで、陸路で最短ルートなら800キロ余り。しかし、安全のために迂回する道を選択せざるを得なかったといいます。結果、1200キロ近い道のりとなりました。
停戦破りを繰り返すスーダン軍と民兵組織。韓国メディアによりますと、車列がハルツームを出る時も銃声が聞こえ、一時ストップする場面があったといいます。
バスが故障したり、パンクしたりと、かかった時間は33時間に上りました。トイレに行くこともままならないため「水分は控えめにとった」との証言もあります。
スーダンで医療支援を行ってきた認定NPO法人『ロシナンテス』のメンバーも陸路で、ポートスーダンまで向かいました。
川原尚行理事長:「JICA事務所、何より国連、ハルツームからポートスーダンまで、本当に長距離・長時間にわたって、すごい一大オペレーション本当にありがとうございました」
23日にハルツームを出発した国連の車列。川原さんは自ら、ランドクルーザーを運転してきました。
川原尚行理事長:「2人のスタッフも支援してくれ、私の心の支えになりました。私が運転でめげそうになった時も、コーヒーを入手してくれて復活した。本当にありがとうございました。片道切符で往復ではないので(車を)捨ててもいいと思ったのですが、ハサバッラ村の村長ハサンが、ポートスーダンに来てくれて『本当によかったな』と。『ランドクルーザーを預かっておくから、お前らまた来いよ』と言われました。本当に色んな方々に支えられて、今回のオペレーションがうまくいった」
その村は、以前から医療や井戸の改修など支援を行ってきた場所。政情不安のなか、様々な事情で10年間訪れることができずにいましたが、村の人たちが診療所を守っていました。
川原尚行理事長:「今回、スーダンを後にしましたけれども、我々は本当にスーダンの人たちを愛しております。軍の組織が、お互い自分のことだけを考えて衝突したということで、何の罪もないスーダンの方たちに悲劇が襲ってきたので、一日も早く停戦が行われて、平和が訪れることを願っております」
各国がスーダンから退避した今、現地で暮らす市民には“取り残される”ことへの不安が広がっています。脱出を決意する人も後を絶ちません。
市民:「市民に非道徳的な行為が行われたり、市民が“人間の盾”にされたりすることを恐れています。これが外国人が退避した後の私たちの懸念です」
すでに日本人職員を退避させた国際NGO『難民を助ける会』も、現地に残るスーダン人スタッフの安全を懸念しています。
古川千晶事務局長:「現地職員も退避しなければいけない状況なんです。彼ら自身の安全が確保できている状態にはなくて。彼らにも家族がいまして、一部職員は、まだハルツーム市内で家族が取り残されている。人道支援の関係者が、戦闘とかに巻き込まれて亡くなると、本来支援を届けるべき相手に届けることができない」
戦闘が始まってから、すでに10日が経過。治安の悪化は深刻で、略奪が至るところで起きています。
帰宅した住人:「家が完全に略奪されている。略奪と破壊でめちゃくちゃだ。ドアは全部破られている。すべてめちゃくちゃだ。一体どうすればいいんだ…」
略奪の被害は、住宅や店はもちろん、国連WFPの食糧4000トンを積んだトラックや、人道支援団体の倉庫に保管された医療器具にまで及んでいるといいます。
破壊される病院もあとを絶たないなか、残された数少ない医療機関は、限られた物資で負傷者を治療しなければいけません。国境なき医師団は、3週間以内に医薬品が切れる可能性があり、早急な人道支援を求めています。
25日、再び3日間の停戦が合意されました。残されている人々の退避だけでなく、必要な支援物資を届けることもできますが、合意がなされた後も散発的な戦闘が起きているといいます。
【“救出”自衛隊機到着のジブチは】
自衛隊の拠点があるジブチの空港近くで取材を続けている、カイロ支局の伊従啓記者に聞きます。
(Q.ジブチの今の様子を教えてください)
伊従啓記者:「25日は、ジブチの国際空港を利用する軍用機の数が、24日に比べてぐっと減りました。各国が、停戦期間中の救出作戦実施を急いだことが分かります。自衛隊機で避難してきた45人は、自衛隊の拠点の中に滞在しています。ジブチは小さな町で、ホテルも数多くありません。各国のスタッフや職員が大挙して集まってきているので、宿泊事情がひっ迫していることも理由の一つにあると思います。中で何が行われているかは、あまり情報の更新がありません。恐らく、非常に長い間、緊張の中にいたということで、まずは体を休めているとみられます。拠点から外に出ることも可能だということで、何人かは外に出たということですが、数は非常に少ないとみられています。帰国に向けて、それぞれがやらなければいけない手続きが非常に多く、時間がとられているという話も聞きました。関係者によりますと、いつまでに出発するという具体的なスケジュールは、まだないということですが、帰国に向けた準備は着々と進められています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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