8日から新型コロナウイルスの分類が「5類」に移行しました。3年3か月間の新型コロナとの闘いを振り返りながら、8日から変わることは何か確認します。
●「密です」から3年
●新しい日常へ
●発熱外来は今…
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
■「5類」移行受け変化は 世界でも大きな節目
8日、5類への移行を受け、各所では“新型コロナ前”の状態に戻す動きが見られました。
成田空港では8日、受付カウンターに張られた飛まつ防止フィルムをはがす作業が行われました。東京駅でも7日夜、JRのきっぷ売り場でアクリル板などが撤去されたということです。このように8日から、目に見えて変わる部分が出てきます。
世界でも大きな節目を迎えています。
WHO(=世界保健機関)は5日、2020年1月から約3年3か月続いていた“新型コロナの緊急事態宣言”を終了すると発表しました。ワクチンの普及や感染拡大により免疫力が高まってきたこと、死亡率が低下してきたことなどから「解除した」としています。
■「密です!」新型コロナとの闘い…この約3年間にあったこと
3年以上続いた新型コロナとの闘いを“ワード”で振り返ってみたいと思います。
2020年3月、全国の小・中学校、高校などへの「一斉休校」の要請から始まり、4月には日本で初めて「緊急事態宣言」が出されました。この年のゴールデンウイーク中、渋谷のスクランブル交差点には、人の姿がほとんど見られませんでした。
明日どうなるか、来月どのような社会になっているのかも誰にも想像がつかない不安な時期だったと思います。
緊急事態宣言に伴い「不要不急の外出自粛」や、百貨店などには「休業要請」が出ました。飲食店には「酒類提供の自粛」も要請されました。緊急事態宣言はその後、2021年にかけて4回出され、そのたびに「いつまで続くのか…」とつらい思いをした人が多かったと思います。
このような状況の中、多くの人が意識し続けたのが「3密」です。
東京都 小池百合子知事
「3つの密を避けていただく」(2020年3月)
「密です! 密です! 密です!」(2020年4月)
「ソーシャルディスタンスの確保」(2020年5月)
忘れている人もいるかもしれないこの「3密」は、「密閉」「密集」「密接」です。この「3密」を避けて、人との距離「ソーシャルディスタンス」を保って行動する「新しい生活様式」が求められてきました。「3密」という言葉は2020年の「新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれ、「密」は「今年の漢字」にも選ばれました。
2020年にはまた、緊急経済対策として国民1人につき一律「現金10万円」の給付が実施されました。
コロナ禍で企業に推奨されたのが、「テレワーク」です。在宅勤務が結果として大きく普及し、都心から地方、郊外に移住して働く人も増えました。社会のあり方そのものにも大きな影響を与えました。
■「5類」移行で変わること “自己負担”発生も
改めて、新型コロナが「5類」に移行することで変わることを確認します。
●行動制限
「緊急事態宣言」、感染者や濃厚接触者への「外出自粛要請」などが、今後はできなくなります。
●医療費
これまで無料だった新型コロナ患者の外来や入院での検査・治療は保険診療となり「自己負担」も発生します。ただ、9月末までは高額な新型コロナ治療薬は引き続き「無料」で、高額な入院費は「月に最大2万円減額」されます。
●ワクチン
8日時点では、来年3月末までは引き続き無料です。
●医療機関の対応
これまでは新型コロナの症状がある場合、受診や入院ができるのは、感染症指定の医療機関や発熱外来といった一部の医療機関のみでした。これからは、全ての医療機関で受診や入院ができることになります。ただ、段階的に拡大されます。
■現場から懸念も 感染者数“リアルタイム”把握が困難に?
実際に新型コロナ患者を受け入れる現場では、不安の声も聞かれました。
私たちが取材した東京・練馬区の大泉生協病院の齋藤文洋院長は「今までと同じような感染対策をしつつも、もっと簡易的に広く発熱した方を診られるようにする工夫がすごく大変。本当にそれでうまくいくのかなというふうに思っています」と話していました。
この病院では、発熱外来を撤廃しました。現在は、待合室をパーティションで区切り、発熱などの症状がある人と通常の患者が接触しないようにしています。今後、もし感染が拡大した場合は、再び発熱外来を設置することも検討しているそうです。
さらにもう1つ、この病院が懸念していることが、感染者数の把握の仕方についてです。これまでは、全ての感染者数の情報を集め把握していましたが、5類への移行で特定の医療機関の感染者数を把握する仕組みに変わります。
新型コロナの感染状況を分析する厚生労働省の専門家会議は先月、「定点把握となることで、感染者数のリアルタイムのモニタリングが困難になる」とした上で今後、「第8波より規模の大きい“第9波”が起きる可能性は高い」などとする見解もまとめています。
多くの人は不安なくコロナ禍前の日常に移行していると思いますが、一方で高齢者や持病がある人の中には「第9波」と聞いて不安がぬぐえない人もいると思います。そのため、体調が悪いと感じるなどしたら、マスクをしたり、外出を控えたりするといった配慮や思いやりは継続していきたいです。変わることは多いですが、変わらずにいなければならないこともあるのではないでしょうか。
◇
これまでは、危機と「同時進行」でやむを得ない部分があったとはいえ、特に行政の対策が後手に回る局面もありました。8日からフェーズが変わりますが、この3年あまりの教訓や反省も踏まえて、「次」に備えてほしいです。
(2023年5月8日放送「news every.」より)
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