検察の「3か月欲しい」の意図は? 袴田さん再審裁判 新たな決定的証拠出すか【現場から、】

いわゆる「袴田事件」の再審=裁判のやり直しをめぐる動きです。再審に向けた三者協議が4月10日開かれ、検察は有罪立証をするか判断するための検討期間が必要として「3か月待ってほしい」との考えを示しました。この3カ月とは何のための時間なのか?取材しました。

57年前の1966年、旧清水市で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で、死刑が確定した袴田巌さん(87)。袴田さんの裁判のやり直しに向けて10日、裁判所と弁護団、検察による初めての三者協議が静岡地方裁判所で開かれました。

非公開で行われた三者協議。弁護団は会場を出るなり怒りをあらわにしました。

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>
「検察官は(公判での)方針を決めるのに3カ月欲しいと言う。『7月10日までには』という話で、これは全く予想外で我々としては憤りを感じている」

今回、一番の焦点は検察が再審の場で改めて袴田さんの有罪を立証するかどうかという点でしたが、弁護団によりますと、検察は有罪立証をするか判断するための検討期間が必要で、7月10日までに立証の方針を示すと、3カ月の猶予を求めました。

<姉・ひで子さん(90)>
「検察官が下ばっかり向いちゃってどうも上を向かない。検察官が何を考えて、何を言わんとしているのかが全然分かりませんでした」

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>
「最終的には犯行着衣の立証ができないですから、それはもう有罪の立証は断念するという風に確信しています。そういう意味では3カ月という期間は何だろうと」

かねてから、えん罪が疑われてきた袴田事件。裁判所が一度は認めた証拠でも疑いの目が向けられてきました。

逮捕後に作成された袴田さんの自白調書は任意性に疑いがあるとして、45通のうち44通を証拠から排除。凶器と認められた「くり小刀」は木工細工用の小刀で、本当に一家4人を殺害できたのか?

そんな中、袴田さんを犯人とする最大の証拠とされてきたのが、事件から1年2ヵ月後に現場の「みそタンク」の中から発見された血の付いた衣類、通称「5点の衣類」です。

しかし弁護側は「1年あまりみそ漬けされた血痕に赤みは残らない」と主張。3月13日、東京高等裁判所は弁護側の主張を認め、袴田さんの裁判のやり直しを決定。さらに「5点の衣類」が捜査機関によって、ねつ造された疑いがあるとまで言及しました。

“最大の証拠”が崩れた今、検察側が“新たな決定的証拠”を出せるのか?

<袴田事件弁護団 西嶋勝彦弁護士>
「どのような観点から見ても新しい証拠で立証しようとしてもできっこない。そのために(検察は)特別抗告を断念したわけですから」

検察側が求めた「3カ月」とは何のための時間なのか?元東京地検特捜部で副部長まで務めた若狭勝弁護士に聞きました。

<元東京地検特捜部 若狭勝弁護士>
「再審公判に向けて証拠を選別したり、どのような証拠を出すのかという検討や整理することもあって、事実上2~3か月ぐらいは時間的にはかかっても仕方ないかなと。少なくとも検察は白旗をあげて、すぐに無罪、論告も無罪を求めるというようなことではなかった」

若狭さんは「3か月」は検察が証拠を検討し、整理する時間と推測。最終的に検察は「有罪立証するだろう」とみています。そして、検察は今、ある1点に頭を悩ませているだろうとも予測します。

<元東京地検特捜部 若狭勝弁護士>
「検察としては、かなり痛し痒しというか、この『5点の衣類』を出して『犯行当時の衣服ですよ』と(再審公判で改めて)主張したい。しかし、5点の衣類を再審公判で出してしまうと、東京高裁の決定のように、そこ(5点の衣類)に光が当てられてしまって、それはねつ造であるということが再審公判の判決でも、またそこを上塗りされてねつ造とされてしまう。それはどうしても避けたいと思うはず」

#LIVEしずおか 4月12日放送

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