グアム島のジャングルにおよそ28年間潜伏していた、残留日本兵・横井庄一。
その帰国からまもなく50年です。
今回、帰国後すぐに入院した病院から、当時の横井のカルテが見つかりました。
なぜ28年間もジャングルに潜伏していたのか。
カルテにはその理由も記されていました。
■日本を熱狂させた帰国「恥ずかしながら…」
「グアム島の横井庄一さんが、たったいま日航の特別機で羽田空港に帰ってきました」
(1972年2月2日 帰国時のテレビ中継リポート)
半世紀前、グアム島のジャングルで現地の人に発見され、帰国することになった
残留日本兵・横井庄一。当時56歳でした。
太平洋戦争の終結を知らされないまま、一人戦争を続けていた横井は、
帰国会見であの有名な言葉を口にします。
「恥ずかしながら生きながらえておりましたけど」
(横井 庄一さん)
「恥ずかしながら」は当時の流行語になりました。
会見後、そのまま国立東京第一病院に入院。
果たして横井はどれほどの強靭な肉体と精神によって
ジャングル生活28年を乗り切ったのか?
今回初めて、当時のカルテの中身が、CBCの取材で明らかになりました。
「こちらなんですけど…。診療記録が届きましたので」
(CBC大園康志)
帰国した年に結婚し、横井が亡くなるまでの25年を添い遂げた妻・美保子さん。
今月23日が94歳の誕生日の美保子さんも、そのカルテを初めて目にします。
■カルテには「錯乱」「亡霊」「幻覚」の文字も
カルテには、体がやせ細り皮下脂肪が少ないことと、ビタミンBの欠乏が書かれていました。
入院後、最初の握力測定の数値は小学校低学年レベル。
そんな横井のジャングルでの大事な栄養源は小動物たちでした。
川エビ・カエルにカタツムリ、ネズミにトカゲ。
年に1~2回は落とし穴でシカをとらえたことも伝えていました。
しかし栄養不足から歯はボロボロになり、84日間の入院期間中に8本も抜歯していました。
さらにカルテには「錯乱」、「亡霊」、「幻覚」の文字も。
グアムの潜伏中、そしてその後、とらえられてからも横井は熟睡できていなかったことが、カルテからもうかがえます。
戦争の呪縛か…
グアムの戦いでは、アメリカ軍に3週間で壊滅状態にされた日本軍。
横井は医師に、「ほとんど初日に所属部隊は全滅」と証言していた記載も。
「アメリカの軍事力ですね。圧倒的な差があって、どうしようもなかったと(夫は)言っていた」
(妻・美保子さん)
■生き残れた3つの理由…そしてなぜ28年間潜伏したのか
そんな中で横井が生き延びることができた理由は精神医学的には3つ。
比較的年長者で、素質的に要求水準が低く、素朴な宗教心があったこと。
これが医療チームの総括でした。
そして、こんな文章がカルテには書き留められていました。
「島民に見つかると殺されることがあったらしい。これも、降伏、世間に出てこない一つの理由であった」
(カルテの記載)
アメリカ軍だけでなく、グアムの島民とも繰り広げられていた銃撃戦。
半世紀を経て明るみに出たカルテには、横井が1997年に82歳で亡くなるまで、ほとんど語られることのなかった、貴重な証言も記されていたのです。
かねてから、妻・美保子さんは「横井の苦難の人生を少しでも皆さんに知って頂いて、平和な世の中がいつまでも続きますように」と話します。
今回のカルテ開示は、帰国から50年の日を前に、改めて横井庄一を知らない若い方々にも、平和の尊さを知って頂きたいという思いからでした。
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