10年前、三重県松阪市で男性の遺体が見つかった事件は、未解決のまま今月時効を迎えようとしていましたが、警察は「異例の判断」で捜査を続けます。そこには遺族の事件解決への強い思いがありました。
20日、近鉄の伊勢中川駅には、チラシを配る男性の姿が…
「情報提供のお願いをしているんですけど、ひき逃げ事故がありまして…」(一瀬信臣さん)
一瀬信臣(47)さんは10年前、5歳下の弟を亡くしました。
「この下の大木の所で敦が引っかかっていて、発見されたわけですけど、ここで寒い、寒いと思いながら、11月で寒かったから亡くなっていたかもしれんし。そう考えていたら涙が出ますよね、今でも」(一瀬信臣さん)
2012年3月、当時33歳だった弟の敦さんは、松阪市の山林で遺体となって見つかりました。
司法解剖の結果、後頭部が骨折していたほか、背中の広い範囲に、皮下出血の跡が確認されました。
さらに松阪市内の県道沿いで敦さんの私物が見つかったことなどから、警察は、敦さんが遺体発見の4カ月前、近鉄伊勢中川駅から会社の寮に向かう途中、車にひき逃げされ、その後、20キロ離れた山林に遺棄されたとみて、捜査を始めました。
時効が迫る中「保護責任者遺棄致死」で捜査を継続へ
しかし、現場に残された物証などは乏しく、捜査は難航。
警察は、死体遺棄・道路交通法違反のひき逃げ、自動車運転過失致死の疑いで捜査を進めてきましたが、死体遺棄と道路交通法違反は時効が成立。
残る自動車運転過失致死も、2021年11月20日が時効となっていました。
そんな中、警察は、重大な決断を…
「一瀬さんがひき逃げ事故に遭い、瀕死の状態にもかかわらず、その状況で松阪市内の山中に遺棄されその結果、亡くなったということも否定できないと考えられましたので今回、保護責任者遺棄致死で捜査を継続していくことを決定しました」(三重県警 交通指導課 大山久男次長)
時効が20年間となる「保護責任者遺棄致死」
ひき逃げされた時点で、敦さんは、まだ生きており犯人は「保護する責任」があったにもかかわらず、遺棄して死なせたという容疑です。
ひき逃げ事件を、保護責任者遺棄致死容疑に切りかえたのは三重県警で初めてのケース。1年前から検察庁と協議を重ねた上での異例の判断でした。
「内容が他のひき逃げに比べてかなり悪質に思われます。本県におきましても前例がない。全国におきましても同一事案がありませんでしたので、検察庁と相談を重ねた上で、保護責任者遺棄致死容疑で行こうということで判断しています」(大山次長)
これで、さらに10年間、捜査が延長されることになりました。遺族の強い要望が後押しした、捜査の継続・時効延長については…
「ありがたい一心です。これで、まだ(敦さんを)忘れられずにいるかなと」「今回、10年また伸びましたけど、節目というふうには考えていない。終わりがないので、僕らには」(一瀬信臣さん)
遺体発見現場の木は10年で朽ち…「敦のことまで風化されていくような気がする」
神戸市に住む、兄の信臣さんは事件後、敦さんの名前を屋号にした居酒屋、「酒処敦」を営むなど、敦さんが生きていた証を残そうと努めてきました。
発生から10年。信臣さんは、家族とともに、遺体が発見された現場を訪れました。
当時、敦さんが体を横たえていた木は、苔むした状態で残っていました。
「倒木がだんだん朽ち果てていくのが、僕らからしたら、悲しいんですよ。敦のことまで劣化、風化されていくような気がする」(一瀬信臣さん)
事件は未解決のままですが、事件現場では変化が…
「一瀬さんがはねられたとみられる現場です。事件当時、歩道はありませんでしたが今は、白線が引かれ、ポールが立てられています」(記者)
敦さんがはねられたとみられる道路は、事件から3年後に歩行者の安全を守る歩道が設けられました。
「10年時効が伸びて正直犯人には苦しんでほしい 自首しないのであればせめて」
10年目を迎えるこの日。情報提供を求めるチラシには、家族の思いを反映して、初めて敦さんの写真が掲載されました。
「当時の写真なので、敦の。もしかしたら、この子、見たかなと、万が一でもあるかな」(一瀬信臣さん)
「どういうふうにひかれたか、どういうふうに山に捨てに行ったか、気持ちだけ知りたい、犯人に対しては」(敦さんの母 一瀬要子さん)
「敦の無念を晴らして、真実を知りたい一心です。10年また時効が伸びて、その10年間、正直、犯人には苦しんでほしい。おびえながら暮らしていってほしい。せめて自首しないのであれば…」(一瀬信臣さん)
(11月26日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
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