北海道の知床で観光船が沈没した事故について、飽和潜水で捜索を行う作業船「海進」が港を出発しました。「水深120メートルでの作業」とは一体、どういうものなのでしょうか。
18日午後に網走港を出た作業船「海進」。
現場海域で「KAZU1」の船内や引き揚げに関する調査などを行う予定です。
海底での作業が可能な飽和潜水について、想像を超える過酷な実態を取材しました。
午後4時ごろに網走港を出た海進では、この後2時間ほどかけて潜水士の体を水深120メートルの気圧に慣れさせる段階に入り、19日から残る12人の捜索など本格的な作業を実施。
現地対策本部によりますと、早ければ今月22日にも観光船の引き揚げを始める見込みです。
水深約120メートルの海底に沈んだKAZU1を巡る捜索で最も高い障壁となるのが気圧です。
普段、私たちが生活している海上は1気圧で、水深120メートルでは約13気圧。
実に13倍もの圧力が掛かることになります。
水深100メートルでペットボトルもぺしゃんこになるほどの水圧に耐えるため、潜水士は特別な部屋で長時間、加圧して体を慣らすなどの「飽和潜水」という技術を使って深い海での作業にあたります。
世界屈指の高度な潜水技術を持つ海上自衛隊潜水医学実験隊に今回、特別な許可を得て飽和潜水の準備などを取材しました。
海底で作業が可能な潜水スーツやグローブ、ヘルメット、非常用呼吸装置など多数の装備品。
そして、ダイバーの体を水圧に順応させるタンク。
水圧が増すほど呼吸で取り込まれる窒素が血液や体の組織に溶けやすくなり、酩酊(めいてい)したような状態になるといいます。
案内してくれた潜水医学実験隊3等海佐の纐纈学さんによりますと、訓練を受けてきた隊員たちでも、このタンク内にいる間は「不安しかない」といいます。
潜水医学実験隊3等海佐・纐纈学:「中は圧力を掛ける時に空気ではなくてヘリウムにガスで加圧しますので、ドナルドダック・ボイスとかヘリウムボイスという形になって鼻にかかるような声になりますので、だんだん何を言っているのか分からなくなって会話は少なくなる傾向があります」
壁にある小さなハッチは食事を出し入れするもので、中と外の気圧が同じになるよう設計されています。
寝る時はソファを倒して2段ベッド。
海上自衛隊では最大6人が気圧に慣れるまで一緒に生活するそうです。
潜水医学実験隊3等海佐・纐纈学:「やはり、この狭い通路や空間でトイレに行きたいので移動したいとか、そういう所でお互いに遠慮していたなっていうのは正直あります」
潜水医学実験隊3等海佐・纐纈学:「(Q.携帯電話などは持ち込める?)持ち込めないです。深度100メートルとか200メートル仕様の携帯電話はありませんので、携帯電話を持ってきても画面が潰れる、壊れるという可能性があります。圧力によって」
タンク内の安全上、電子機器類の持ち込みは極力避けられ、本や雑誌を読んだりしてストレスをためないよう努めているそうです。
24時間以上、加圧を変えた過酷なタンクで過ごした後、海上自衛隊ではようやくダイバーが深海で「飽和潜水」をすることができます。
潜水医学実験隊3等海佐・纐纈学:「海底120メートルですと非常に暗いので、ライトを恐らくヘルメットなどに付けていくと思うが、もう本当に手元しか見えないというイメージです」
一方、知床沖では民間の作業船「海進」が飽和潜水を行う準備をしていました。
関係者などによりますと、加圧状態にしたまま水中のエレベーターを使って外に出て作業は体を温める装置や通信機、カメラなどが付いた特殊なスーツを着て実施されるといいます。
※「KAZU1(ワン)」は正しくはローマ数字
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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