ロシアのウクライナ侵攻を巡り、対面での停戦交渉が29日にトルコで行われる見通しとなりました。一方、ロシアの国防省は軍事作戦の変更ともとれる発表をしました。その狙いとは?
■ウクライナ西部リビウでも激しい攻撃
ロシア国防省は「空中発射型の長距離ミサイルで燃料基地を破壊した」と発表しました。
ポーランド国境近くの西部の都市・リビウにある石油貯蔵施設では、激しい炎上に伴い、黒煙が巨大な塊となって空に立ち上りました。消防士は耐火服に身を包んで消火活動を続けましたが、炎の勢いを抑えることができません。
市街地にも緊張が走ります。市民は急いで地下シェルターに避難しました。恐怖におびえる日々が続きます。
避難者
「ガラスの割れる音を聞いて、私たちは建物の間に隠れようとしました」
ロシア国防省のツイッターで27日に公開された映像では爆撃の様子が撮影されています。
さらに26日には黒海から発射した巡航ミサイルの映像を公開。首都キエフの西にあるウクライナ軍の施設を攻撃したとしています。
■“苦戦”のロシア側が「作戦変更」か
ロシアのプーチン大統領は27日、前線で戦う兵士をねぎらいました。
ロシア・プーチン大統領
「私は皆が勇気と専門性を持って、恐れることなく行動しているのを知っている。全国民が誇りに思っている」
軍事侵攻から1か月が過ぎ、ロシア側の“苦戦”が伝わる中、ロシア国防省は“作戦変更”ともとれる発表を行っています。
ロシア国防省の会見
「作戦の第一段階の主な任務は達成した。主要な目的とするドンバスの解放に集中できる」
ドンバスとは親ロシア派が一部支配するウクライナ東部のドネツク州やルガンスク州のことです。ロシア軍の激しい攻撃で街の破壊が進むマリウポリも含まれます。ロシア側の狙いについて専門家はこう指摘します。
畔蒜泰助 笹川平和財団・主任研究員
「キエフを落としてゼレンスキー政権を打倒してという目標が当初あったかもしれないが、描いていたシナリオよりはハードルを下げて、東部を確保したうえで勝利したと宣言する、その準備段階に入った可能性がある」
■ロシア軍の包囲続くマリウポリの惨状
そのマリウポリでは、黒焦げになった車が並び、アパートは最上部から崩れ落ちています。毛布をかけられた遺体も放置されたままです。
地下に避難していた女性が部屋に行くと、中は跡形もなく破壊されていました。
部屋の惨状を見た女性
「私のミシン・・・。ここで生まれ、ここで結婚し、子どもが生まれた。でも、今は何も残っていない。(涙を拭きながら)しかしマリウポリから出て行きたくない」
マリウポリ市長は28日に「約16万人の市民が取り残されている」と伝えています。
ある男性はアパート内で身を潜めていて助かりました。
男性
「アパートの中をあちこち移動して、なんとか生き延びた。生き残ったんだ。神様ありがとう。生きているんだ。だから娘に伝えたい。(泣きながら)父さんは生きている」
■バイデン氏の発言に“内政干渉”の指摘も
こうしたなか、アメリカ・バイデン大統領の発言が波紋を広げています。
アメリカ・バイデン大統領
「ウクライナにおいてロシアの勝利はない。彼(プーチン大統領)は権力の座にとどまり続けてはならない」
バイデン氏は26日、プーチン氏について「権力の座にとどまり続けてはならない」と発言。ロシアに体制転換を求める“内政干渉”との指摘があがっていたのです。
ロシア・ぺスコフ大統領報道官
「それはバイデンが決めることではない。ロシアの大統領はロシア人が選ぶ」
バイデン氏は27日、体制転換を求める意図はないとしました。
アメリカ・バイデン大統領
「(Q. ロシアの体制転換を要求したのか?)ノー」
■「まず戦争を止めなければ」ゼレンスキー氏妥協示唆も
一方、次の停戦交渉はトルコのイスタンブールで対面形式で行われる予定です。
ウクライナメディアによりますと、ウクライナの代表団は現地時間29日午前10時から行うと明らかにしたということです。ゼレンスキー大統領は、ロシアが求める「中立化」などについて妥協が可能だと話しました。
ウクライナ・ゼレンスキー大統領
「安全保障と中立化、非核国であることについて受け入れられないわけではない」
ただ、そのためには「まず戦争を止めなければならない」と強調。その上で国民投票を行う必要があるとしています。
■戦時下のウクライナをイラストにして発信し続ける日本人女性
燃えている住宅を見つめる男性と猫のイラスト。「絶対に許さない」「絶対に忘れない」と書かれています。2月25日、ロシアがウクライナに侵攻した翌日にインスタグラムに投稿されたものです。描いたのは東部の街・ドニプロに住む石田朝子さん(52)です。
山本恵里伽キャスター
「あの絵はどういう気持ちで描いた?」
ドニプロ在住 石田朝子さん
「まさにそこに描いてある通りの私の気持ちが反映されている。それをロシア語で書いたのは、攻撃する側、ロシアに住んでいる人たちに、私達は忘れないよっていうことをまず伝えたかった」
石田さんは町に迫るロシア軍の侵攻をイラストにして毎日投稿します
■石田さんが投稿したイラストの一例
戦争17日目に投稿したのは「叫ぶ主人公」のイラスト。
「近ごろの朝の習慣。ロケット弾を迎撃するウクライナ軍の高射砲の音で“またかコノヤロウ!”と跳ね起きる。おかげさまで早起きになりました」
戦争27日目に投稿したのは「破壊された建物」のイラスト。
「今日、たまたまTVで全壊した町を見ました。悲しくなったり、私は見ているだけで何もできない。なんて無力なんだと思ったり」
戦争28日目に投稿したのは「夜に音楽を聴く主人公」のイラスト。
「今日も私たちは無事です。私がどうしても慣れることができなかったのが異様なまでの静けさでした。なんだか、町中のみんながいなくなって、私たちだけになってしまったかのような恐ろしさ」
■“今日も無事です”に込めた思い「日常を取り戻そう」
石田さんの投稿は毎回「私たちは今日も無事です」という言葉から始まります。
山本キャスター
「“私たちは今日も無事です”というコメントが添えられている。その言葉を添える意味合いや思いは?」
石田さん
「自分でそれを書くと安心なんです。そういう意味で、毎日同じ“無事でした”。それを書けるっていうのは非常に幸せなこと。そういう気持ちを込めて、毎回同じ文面で投稿を始めている」
戦争という非日常の生活の中、石田さんはイラストを通して“日常を取り戻そう”としているといいます。
石田さん
「やっぱりまだ予断を許さない状況。ただそれを置いておいて、自分で無理にでも日常を取り戻す努力をする。それが今、必要じゃないかと思ってる」
(28日23:33)
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