ウクライナとロシアによる4回目の停戦協議は、打開策が得られないまま、一時中断となりました。協議中も攻撃は止まらず、新たな死傷者も出ています。
■“4回目”一時中断「政治的見解異なる」
日本時間14日夜、停戦協議が初めてオンラインで行われました。
これに先立ち、ウクライナ側は「建設的な話し合いが始まっている」との認識を示す一方で、ロシア側も「この数日で共通の見解、署名のための文書につながるかもしれない」として、双方が交渉の進展に期待をにじませていました。
しかし、停戦協議が始まると、ウクライナ交渉団のトップは、ツイッターで次のような内容を投稿しました。
ウクライナ代表団・ポドリャク大統領府顧問:「交渉は進んでいるが、状況は難しい。意見が割れているのは、政治的な見解が異なるからです」
その後、協議は一時中断し、15日に再開する見通しとなりました。ウクライナ側によると、交渉の内容について整理するためとしています。
■早朝に空爆・・・“原発”送電線も損傷
攻勢を強めるロシア軍は、停戦協議前にも、攻撃の手を緩めませんでした。
まだ、多くの住人が寝静まっていた朝5時ごろ、首都キエフ中心部から20キロしか離れていない地区のアパートが、攻撃を受けました。
消防士:「私の体につかまって。もう大丈夫、下りたよ」
救出する間も、建物から煙が吹き出し続けます。この空爆で、1人が亡くなり、12人が負傷しました。
キエフの別の地区では、防犯カメラに映る一人の男性が何かに気付き、空を見上げた瞬間、すぐそばにミサイルが飛んできました。
ウクライナ南東部マリウポリでは、ロシア軍の攻撃によって、至る所で黒い煙が上がっていました。
ウクライナ政府は、マリウポリで死亡した住民は、これまでに2500人に上っていると発表しています。
また、チェルノブイリ原発への送電線が、ロシア軍の攻撃によって、再び損傷したと、現地の電力会社が公表しました。
原発への電力の供給は、非常用のディーゼル発電機で続けられているということです。
■メダリストも軍入隊「この国は僕の家」
プーチン大統領に対し、直接会談に応じるよう呼び掛けているウクライナのゼレンスキー大統領ですが、フェイスブックに投稿した新たな動画では、次のように話します。
ゼレンスキー大統領:「侵略者は、まだ我々の土地にいる。全力で戦おう。街を、村を守ろう。国土の隅々まで守り抜こう。私たちの魂を守ろう」
ウクライナでは、現役のトップアスリートたちも、次々と志願して軍に入隊しています。
東京五輪・空手 銅メダリスト スタニスラフ・ホルナ選手(33):「毎晩だいたい午前2時、3時から6時、7時くらいまでロケットを撃ち込んでくるから、毎晩シェルターに行く生活で、まともな睡眠も取れない。何とか生き抜いている状態だよ」
14日、取材に答えてくれたのは、去年の東京オリンピックの男子空手で、銅メダルを獲得したスタニスラフ・ホルナ選手です。
現在、ウクライナ西部の街・リビウの基地にいて、パトロールや戦いに備えているといいます。
ホルナ選手:「街は混雑しているよ。東側から、多くの人たちが流れ込んできているから。こっちのほうが安全で、攻撃も受けていないからね。それで、運搬や宿泊施設が足りないなどの問題が発生している」
妻と2歳の息子はハンガリーに避難させ、1人で戦場に残ったホルナ選手。軍隊に入隊したのも、国を守るためには、それしか選択肢がなかったからだといいます。
ホルナ選手:「これは、僕が選んで入ったんじゃなくて、戦争がやってきたんだ。僕から戦争に行ったわけではないんだ。あなただったら逃げられる?この国は、僕の家なんだ。この気持ちを知らないのは、とてもラッキーなことなんだよ。その選択に迫られていないことが、とてもラッキーなんだ」
■ロシア国防省 “空港制圧”映像公開
一方、首都キエフを取り囲むように、3方向から部隊を前進させているロシア軍。ロシア国防省は、キエフ近郊の空港を制圧した際のものとする映像を公開しています。
ロシア軍兵士:「前方攻撃、スティンガー。左から攻撃」「大丈夫、大丈夫。左へ行け。すべて、うまくいった」
ヘリコプターからの攻撃に続き、兵士たちは地上に降り、空港に進んでいます。
ロシア軍兵士:「行こう、2階もチェックしよう」
空港を制圧したロシア軍。公開された映像では、ロシア軍は、民間人を傷付けないことを強調します。
■ロシア兵捕虜「プーチン氏はうそつき」
一方、ウクライナ内務省も、捕虜にしたロシア兵が会見する動画を公開しました。
ロシア兵捕虜とされる男性:「私たちは皆、自発的にここにいます。そして、真実を世界に伝えたい。ここで何が起きているかを」
自らの意思で会見を開いたと語る、5人の捕虜。自分たちが行っていた任務などを、こと細かに説明するなかで、語気を強めたのは、自国のトップに向けた怒りです。
ロシア兵捕虜とされる男性:「特別軍事作戦に関して、徴集兵がいないという、プーチン大統領の声明はすべてうそです。彼はうそつきで、戦犯です」「誰にも、銃を撃つなんて言われなかった。ただ放り出されただけ。 私たちは殺されかけたんですよ、大統領!あなたは間違っている。これは、あなたの責任だと思います。大統領、これを終わらせて下さい」「ここでは、人々が亡くなっています。子どもたち、おじいさん、おばあさんたち、罪もない人々がプーチンのせいで」
■ロシア第2の実力者「お前たちは終わり」
こうしたなか、プーチン大統領に次ぐ“ロシア第2の実力者”ともささやかれる、ロシア南部・チェチェン共和国のカディロフ首長が14日、自身がウクライナ入りしたことをSNSで明らかにして、こう警告しました。
カディロフ首長(テレグラムから):「先日まで我々は、キエフにいるお前たちまで20キロの地点にいたが、今は、さらに近付いている。降伏しなければ、お前たちは終わりだ」
プーチン大統領の後押しで、チェチェン共和国の実権を握るカディロフ氏。プーチン大統領に忠誠を誓う見返りに、私的な軍隊を持つことが許されているとされる人物です。
■アピール狙いは?専門家「鼓舞する材料」
実際に、カディロフ氏がチェチェン共和国からキエフ近郊まで来ているか定かではありませんが、SNSでその存在をアピールする狙いは、どこにあるのでしょうか?
軍事ジャーナリスト・世良光弘氏:「キエフの首都の方角に3方向から行っているといっても、戦線が膠着(こうちゃく)している状態なんです。ですから、これを打開するための意図もある。チェチェン共和国の首長が、前線に行ってるんです、ロシア兵と一緒に。ということは、孤立しているロシア兵にとっては、かなりの鼓舞する材料にはなるかなと思う」
さらに、軍事同盟国としてロシアを支援するベラルーシに、ウクライナへの派兵を促す狙いもあるのではと指摘します。
世良光弘氏:「ベラルーシの大統領は、どっちつかずというか、自らの兵士を送り込むというとこに、まだ決断はしてないですよね。チェチェンの首長が、ここまで行っているというところを見せることによって、ベラルーシも、あわよくば本格参戦してくれるんじゃないかという意図もあったのかもしれない」
(「グッド!モーニング」2022年3月15日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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