地対空ミサイル

地対空ミサイル, by Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki?curid=21188 / CC BY SA 3.0

#地対空ミサイル
地対空ミサイル

地対空ミサイル(ちたいくうミサイル、)は、地上から空中目標に対して発射されるミサイル。大規模なミサイル・サイトを設置する必要のあるものから、発射機を肩に担いで発射する小規模なものまである。

地対空ミサイルは、その用途から、大きく3種類に分けられる。

HIMAD用の地対空ミサイルは、最も初期から運用されてきたものである。遠距離で敵機を探知・捕捉する必要があるので、かなり大規模な設備が必要となる。一方、VSHORAD用の地対空ミサイルは比較的最近登場したもので、短射程なので小型であり、なかには個人で携行・使用できる携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)もある。MANPADS以外のVSHORADミサイルや、HIMADとVSHORADの間を埋める短射程のSHORADミサイルの多くは車載化されており、迅速に移動・展開できるようになっている。

艦船発射型のものは艦対空ミサイルと呼ばれており、基本的な原理は同一であるが、動揺する艦上での運用や風浪への対策が必要であり、また、運用形態も異なることから特別な配慮が必要となるので、(ロシア製のいくつかのミサイル・システムのように)設計段階から考慮されていない限りは、別々に開発されることが多い。ただし、SHORADシステムは、過酷な野戦環境に対応するように開発されていることから、艦載対応も比較的容易であり、アメリカのチャパラルやフランスのクロタルのように転用された例もある。

地対空ミサイルは、他の多くのミサイルと同様、第二次世界大戦中のドイツで着想された。1943年頃より、ナチス・ドイツは、連合国によるドイツ本土爆撃の激化に対応して、彼らの有していた先進的なミサイル技術を防空に応用することを決定し、「Hs 117」や、V2ロケットの派生型である「ヴァッサーファル」(Wasserfall)などが開発された。しかし、ドイツの国力の払底により、これらが大規模に実戦投入されることはなかった。

高度10,000mを飛行可能なアメリカの新型爆撃機B-29の脅威が逼っていた日本でも独自に、B-29を撃墜可能な地対空ミサイル「奮龍」を、1944年初頭から開発していたが、終戦までに間に合わなかった。

その後、核戦略時代の到来とともに、自国上空に侵入してくる核搭載の爆撃機を、その核兵器の影響が及ぶよりも遠距離から迎撃する必要が生じ、防空兵器としての地対空ミサイルが重視されるようになった。この時期には、これらの想定任務を反映して、HIMAD用途でのミサイル・システムの開発に重点がおかれていた。なお、この時期のHIMADシステムには核弾頭を搭載したものがあった。これは、1発のミサイルで1機の航空機や1発の弾道ミサイルを撃墜しようとするのではなく、1発で大挙をなしてやってくる長距離爆撃機編隊や立て続けに降下してくる弾道ミサイルを可能な限りまとめて撃墜しようとするものであった。しかし、地対空ミサイルである以上、自国または同盟国の領土の上空で核爆発を起こすことになるため、それによって発生する放射性降下物や強力な電磁パルス(EMP)による味方の被害も甚大になることが予想された。放射性降下物は人的、環境的被害を与え、電磁パルスは電力をはじめとする各種インフラに損害を与える。このため、核弾頭を搭載した地対空ミサイルは早々に姿を消している。

このようにして開発されたHIMADミサイル・システムが一躍有名になったのが、1960年5月1日のU-2撃墜事件である。これは、ソ連の第一世代HIMADミサイル・システムであったS-75(SA-2 ガイドライン)が、高高度の成層圏より偵察飛行を行なっていたU-2偵察機を撃破したもので、従来の迎撃戦闘機では到達不可能な高度でも地対空ミサイルであれば攻撃可能であることが周知された。

ここで使用されたS-75をはじめとするソ連の地対空ミサイル・テクノロジーは、第二次印パ戦争で初実戦を経験したのち、ベトナム戦争と第四次中東戦争において大規模に実戦投入され、西側諸国に大きな衝撃を与えた。ベトナム戦争では、S-75に加えて、これよりやや短射程だがより敏捷なS-125(SA-3 ゴア)、そしてもっとも初期のMANPADSである9K32 ストレラ2(SA-7 グレイル)が投入されており、高高度ではS-75、中高度から低高度ではS-125、超低高度では9K32及び高射砲と、縦深的な火力発揮が可能となっていた。ベトナム戦争の期間中、北ベトナムは4,000発ものS-75を発射し、その稠密な防空網に直面したアメ…

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