ロシアのウクライナ侵攻を巡って国際社会で大きな動きです。国連総会の緊急特別会合でロシアを非難する決議が日本を含む141の国の賛成で採択されました。国際社会の圧倒数がロシアの軍事行動に「NO」を突き付けた結果となりました。TBS報道局の後藤俊広政治部長と話を進めていきます。(聞き手:小倉弘子アナウンサー)
--国連総会の緊急特別会合でロシアを非難する決議が日本を含む141の賛成で採択されました。
141という国・数の重みですが、そもそもこういった決議を全体でやることは極めてレアなケースです。国連は全体で193の国が加盟していて、そのうちの141。他の残りの国がどういった投票行動を示したかということに注目すると、反対を明確に捉えたのは5か国しかありません。ロシアとベラルーシという今回の当事者的な立場の国、あとは北朝鮮などに限られているということです。比較的ロシアと良好な関係の中国などは今回棄権をしています。実際、YES/NOだと141対5という圧倒的なスコアで今回の非難決議が採択されました。これだけ国際社会が、今のロシアの対応に対して厳しい意思表示をしたということが言えると思います。
--“国際社会からの厳しい目”、SWIFTからの排除など“国際社会からの制裁”がロシア国内での世論の高まりにも繋がっていくのか。
決議の前にも、日本を含めたG7や各国で厳しい経済制裁が進んでいます。日本企業も、経済制裁を踏まえ現地工場の稼働・部品供給など、通常ならば普通に行われる経済活動をロシア国内ではもう行わないという動きが出てきています。一つの戦争の不幸な要素ですけれども、ロシア国内の経済がかなり深刻になってくると、実際戦争にコミットしていないロシア国民の多くも経済的な困窮・厳しい状況にさらに追い込まれてしまう危険性があると思います。
--軍事侵攻が進められて犠牲となっている方々も増えてしまっています。民間人の死者がウクライナで2000人を超えているという報道もあります。
戦争ですから、死傷者・被害の状況は情報が錯綜しています。大きな情報・小さな情報、それぞれが発信する側の思惑もあると思いますが、少なくとも現地の映像を見ている限り、かなりの人的な被害が出ていると感じます。とにかく停戦のイニシアチブを各国は取ってくことが今後大きな課題になってくるんだろうと思います。
--現地の映像を見ていて本当に苦しくなりますが、目をそらしてはいけないなと思います。翻って日本の政治の観点からはどうでしょうか。
岸田首相は、3日午後7時を目処に記者会見を行います。メインテーマは、まん延防止等重点措置についてです。記者会見というのは通常1時間前後行われます。もちろん“まん延防止”以外の対応、例えばウクライナ情勢に関連するテーマだと「原油高に対して国としてどういう補助を示すか」「在留邦人の安全確保にどう取り組むか」といったものもあると思います。やはり国連で異例の形の決議が出たわけですから、岸田首相自身の言葉で「日本政府として今回のこの軍事紛争をどう見てるのか」「より具体的に日本政府としてどういった取り組みをしていくのか」を聞いてみたいです。
--ウクライナのゼレンスキー大統領は国内の支持率が90%を超えているという報道もあります。大変な状況の中でも国民がリーダーを信じているって素晴らしいことだと思います。
ウクライナでは実際戦争が行われています。そしてそこに向き合っているヨーロッパでは、厳しい経済制裁ということで、ロシアといってみれば“準戦時体制的”な空気に包まれている緊張感があると思います。日本は地政学的に比較的今回の軍事衝突の場からは離れてるところもあり、そこら辺の空気感はヨーロッパに比べれば弱いのかなと思います。そういった中でも、やはり日本の明確なメッセージは、非常に世界各国が今回注目してると思います。
これまでの岸田首相の会見を見てみますと、岸田さんはかなり慎重な考え方をする人ではないかなというふうに思うんですね。例えば会見でよく用いるワーディングでいきますと「検討する」があります。「こういったテーマについてどう思われてますか」という質問があった場合「これはまず重要な課題であるから検討していきたいと思います」あるいは「閣内で議論を進めていきたいと思います」というものです。永田町の言葉で言いますと「待ちの政治家」。要するに情勢とか状況をよく見極めて決めていくということ。
あるいはもう一つ言えるのは「いろんなバランス」を考えます。つまり、物事一つを決めるにあたって、どうした方が世論が支持してくれるのか、あるいは党内のバランスはどちらに決定すればいいんだろうか。例えば佐渡島の金山の世界文化遺産推薦の話もありました。状況をいろいろ見た上で判断することがありますが、これはおそらく平時の対応だと思います。先ほど申し上げたように国際社会のかなりの地域では準戦時体制的な空気感があります。
今すごくトップリーダーに対してリーダーシップを求める空気感も出てきてる中でいくと、やはり岸田首相は会見を開くという場がありますから、日本として、あるいは日本国の首相として、自分は軍事衝突を平和裏に解決するためにどういったイニシアチブで臨むんだ、あるいは主にロシアとの対話を念頭なんですけれども、こういった戦略を用いてプーチンと向き合い何とか平和裏にというかこれ以上の犠牲を出さないような形での解決策を日本としてやっていくんだ、という姿勢を聞きたいなと思います。
--岸田首相の聞く力。いろいろな人の意見を聞きながら判断していくのは見ていてすごくわかるんです。それから総理大臣になるときの「何かをやります」というよりも「首相になるんだ」っていう強い気持ち。それはすごく見ていてわかったんですけれども、トップになったことでどこに導こうとしているのか。国際社会の中で日本はどんな発言をするのかがすごく注目されてると思います。
そうですね。軍事侵攻から1週間経ちますが、日本の動きを見ていますと、必ずしも迅速だったとは言えないと思います。特にSWIFTからロシアを排除する決定に関しても、時間差でいきますと、やはりG7の他の国の方が早い決定をしたというのは事実です。後手後手批判とも受けかねない今の状況を挽回するためには、ある程度踏み込んだ・思い切ったメッセージが岸田首相には求められるんじゃないかなと思います。
--3日にも2回目の停戦交渉が行われるという見込みとも報道されています。そういう中で1時間ほど岸田首相が喋るチャンスがあるというのは、やはり世界のリーダーたちも見ているということなんですよね?
まさにそうだと思います。「日本のプライムミスターはどんなことを言うんだろうか」と非常に固唾を飲んで見守られているんじゃないかなと思います。おそらく岸田首相もそのあたりは意識してると思います。2日、ウクライナの避難民の受け入れを表明しています。おそらく会見では「日本としてはこういった形で受け入れます。国際貢献として推し進めるんです」ということは言うと思いますが「さらに今の戦闘状況を抑えるために日本としてこういうことを取り組みます」というメッセージをぜひ聞いてみたいなと個人的に思います。
--ロシアが振り上げた拳の納め方。それをどのように日本として促すのか。難しいところですよね。
イソップ童話の『北風と太陽』があります。明確な反対の姿勢も重要ですが、ロシア側が「これだったら妥協できる」というある程度の逃げ道や「これなら軍が徹底できる」というシナリオが必要かなと思います。逃げ道を用意して落とし込んでいく。そこはもちろん日本一国ではできないので、やはりアメリカ、それこそG7と各国とで協調することが必要なんですけれども、まずそのためにも日本がアプローチすることが重要じゃないかなと思います。
--そこに訴えかける力を岸田首相は持ってるわけですよね。
いま日本はロシアとの関係がありますので、そういったアドバンテージはあると思います。
(03日17:05)
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