ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部の2つの親ロシア派支配地域を独立国家として承認。また、ロシア軍による現地での平和維持活動を命じました。これによってウクライナ情勢をめぐり、新たな局面に入りました。そこで、今後ロシアの「軍事侵攻」の可能性はあるのか、専門家3人にききました。
〇筑波大学・中村教授
「アメリカに侵攻とみなされない範囲で、ウクライナ全土を掌握しようと考えている」
〇東京大学・小泉専任講師
「大規模な戦争になることも想定に入れざるをえない」
〇慶応義塾大学・廣瀬教授
「将来的には、首都キエフも戦場になる可能性も」
■ウクライナ情勢 今どうなっているのか
南波雅俊キャスター:
ウクライナをめぐってロシアの新たな動きが伝えられてくる中、現在のウクライナ周辺の状況をまとめました。
【ベラルーシとの合同軍事演習】
ベラルーシのウクライナ国境周辺で、3万人規模のロシア軍が参加して行われているロシアとベラルーシの合同軍事演習は2月10日~20日までとされていました。しかし、ベラルーシ国防省は、「部隊の点検を続ける」として演習の継続を発表しました。
【ロシア軍の規模は19万人】
ウクライナ国境付近、あるいはウクライナにいるロシア軍の数をアメリカとしては19万人規模だと見ています。
【バイデン大統領】
アメリカ・バイデン大統領は2月18日、「ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を決断したと確信した」と話しました。
2月24日に米ロ外相会談が行われ、フランスのマクロン大統領も間に入りながら、その後米ロ首脳会談も行われるのではという動きがあります。
【一方的に独立を承認】
ウクライナのドネツク州とルガンスク州、親ロシア派が事実上支配している地域に関して、2月21日、プーチン大統領は「独立を承認する」と大統領令に署名しました。一方的に承認するという形です。ロシア軍による現地での平和維持活動を指示、つまり平和維持軍を送るのではないかとも見られています。
■「ロシアはウクライナ全土を掌握しようと考えている」
そんな中、日に日に変わっていくウクライナとロシアの情勢を専門家は今後どうなると見ているのか、3人の方にお話を伺いました。
まずは、ロシア政治に詳しい筑波大学の中村逸郎教授です。親ロシアの2つの地域の独立承認がなぜこのタイミングだったのかという点ですが、「現在、ウクライナのゼレンスキー大統領の支持率が低く、事実上ウクライナは無政府状態」だと中村教授は見ています。ですから「今がチャンスと考え、欲しいものを取りにいった。何もできないアメリカの無力さとを見せつけることにも成功した」とロシアにとって有利な状況だったのではないかというふうに見ています。
そして今後についてですが、「アメリカに“侵攻”とみなされない範囲で少しずつ既成事実を重ねて、ウクライナ全土を掌握しようと考えている」と中村教授は見ています。2月24日に米ロ外相会談が行われ、その後、米ロ首脳会談が開催される、というふうに中村教授は見ているんですが、ロシアが有利に交渉を進めるのではないか、と話しています。
井上貴博キャスター:
中村さんは、首脳会談が行われそうだとおっしゃっているんですか?
南波キャスター:
そうですね。中村さんは首脳会談は行われそうだという立場です。
■「大規模な戦争になることも想定に入れざるをえない」
続いては、てロシアの安全保障に詳しい東京大学 先端科学技術研究センターの小泉悠専任講師の見方です。
ウクライナ国境付近の19万人規模のロシア軍について「ウクライナ政権を変えるようなことを、軍事力でやりはしないか非常に心配している」と危機感を募らせています。「ウクライナに対して“そろそろ言うことを聞きなさい”というフェーズに入っている可能性もあるのではないか」と話しています。
そして小泉さんは「大規模な戦争になることも想定に入れざるをえない」というような見方をしています。また、米ロ首脳会談については、「アメリカ側が“侵攻がない場合に限り応じる”と立場を示している中で、もしロシアが本当に“平和維持軍”を派遣した場合、アメリカが軍事行動ではないかと判断する場合には、首脳会談中止の可能性もあるのではないかと考えています。
■「次に何をするのかまったくわからなくなった」
そして3人目はロシア政治に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授です。ウクライナ国内で親ロシア派が支配する2地域に一定の自治権付与を含む「ミンスク合意」という合意がなされていました。ウクライナ東部の紛争が2014年からありましたが、その紛争の停戦のために2015年に合意されたものです。
「2つの地域に自治権を付与」というところが大きなポイントになってきます。自治権がもしありますと、ウクライナ政府がNATOに加盟をしたいと主張したとしても、この2州が、いや我々はしたくない、と言えば、そう簡単にNATOに入れないという状況があるんです。ですから、ロシア側としては、ウクライナにミンスク合意の遵守を求めていると考えていたんです。ところが、この2地域の独立を認めた、ということで「欧米との交渉材料を自ら捨ててしまったのではないか。理解しがたい」そして「今回の件で次に何をするのかまったくわからなくなった」と廣瀬教授は話しています。
つまり今後は、「将来的にウクライナ国内で戦争も十分にある。ウクライナ東部だけでなく首都キエフも戦場になることも」と廣瀬教授は見ているということです。
2月24日の米ロ外相会談についてはアメリカ側が拒否する可能性が大きいと廣瀬教授は考えているということです。
井上キャスター:
米ロ首脳会談がどうなるか、これはポイントになりそうですが、欧米がどこまで経済制裁に踏み込めるのか。経済制裁をしてしまうとエネルギー価格が高騰して返り討ちにあってしまうというところもあり、ロシアは「元」など他の通貨に変えているのでそんなにダメージはないんじゃないかっていう見方もありますが。
星浩コメンテーター:
今回の経済制裁は意外と効くと思いますね。つまりロシア企業と欧米の企業が商取引している場合、欧米の企業にも制裁するということになりますので、欧米の企業はもうロシアとは商取引しない、ということになっちゃいますから、相当遮断されますよね。
それから今回の2州の独立承認でワンステップちょっと変わった状況になったわけですけれども、おそらく米ロ外相会談をやって、そこでもうこれは進展なしということであれば首脳会談をやらないということになる可能性があるんですけど、その場合はかなり全面対決の様相になってきます。ロシア軍も侵攻するでしょうし、相当きつい経済制裁が入ってきますから、あの辺の秩序が変わるということにもなりかねないですよね。
井上キャスター:
そうすると、この外相会談がどうなるのか相当大きなポイントになりそうですね。
ホラン千秋キャスター:
専門家によっては大規模な戦争も想定に入ってるということですので、もし戦争となった場合、国際社会はどのような影響を受けるんでしょうか?
星コメンテーター:
アメリカが言ってるように力による現状変更を認めるということになりますので、ここ数十年続いてきた国際社会の秩序が崩れかねないですよね。例えば中国の南シナ海の問題とか、台湾の問題にも波及してきますので。国際法とか国際経済、自由経済の秩序を守るんだということでずっと維持されてきた「力による現状変更は認めない」というルールが変わってしまう可能性も出てきますよね。
(22日18:47)
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