ウクライナ情勢をめぐり、アメリカやイギリスが相次いで現地の大使館職員の退避を発表するなど、緊張が高まっている。
イギリス外務省は24日、「ロシアからの脅威が高まっている」として、ウクライナにある大使館から、一部の職員や家族を退避させると発表した。
公共放送・BBCによると、今週中に半数のスタッフを退避させる方針。
アメリカ政府もすでに、大使館職員の家族に国外退避を命じていて、イギリス政府の対応は、これに続くもの。
こうした中、NATO(北大西洋条約機構)は24日、ウクライナ情勢に対応するため、東ヨーロッパに艦船などを増派すると発表した。
これに対しロシア政府は、「軍事活動を正当化するために、ロシアを悪者にしている」と反発していて、さらに緊張が高まっている。
一方、外務省は24日夜、ウクライナ全土の危険情報を、上から2番目にあたるレベル3の「渡航中止勧告」に引き上げた。
外務省は渡航をやめるよう呼びかけるとともに、滞在する日本人に対しては、出国するよう強く促している。
このニュースについて、哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人氏に話を聞く。
三田友梨佳キャスター「ウクライナの危機は、政治哲学の視点から国際情勢を読み解く萱野さんの目には、どのように映っていますか」
萱野稔人氏「現時点で、ウクライナへの侵攻が実際になされるかどうか、予測は難しいです。ただロシア側が、アメリカの意図を読み違えてしまうと、その可能性は高まります。歴史的にも、戦争や武力紛争は、相手の意図を読み違えたり、偶発的な事故の重なり合いによって生じることが多かったんです。その点で言えば、アメリカやイギリスによる国外退避命令は、やむを得ない措置だとしても、ロシア側に誤解を生じさせかねません」
三田キャスター「まさにその大使館員の家族に退避命令を出したことを、ロシア側がどう受け止めるのかというのが、1つのポイントになるということですか」
萱野氏「ロシア側は、ウクライナのNATO加盟を、自国の安全保障上の死活問題だと捉え、絶対にやめさせたいと思っています。これに対し21日に行われた米ロ外相会談では、アメリカがロシア側に文書で今週中に回答をすることが合意されました。その直後に、こうした国外退避命令が出されれば、ロシア側は、アメリカ側から建設的な回答は期待できないと思うかもしれません。それによって、逆に緊張が高まるということもありえます」
三田キャスター「今後、アメリカとロシアが外交的な解決を模索する際に、焦点となるのはどんな点なんでしょうか」
萱野氏「アメリカのバイデン大統領は、NATOをウクライナまで拡大しないということを、文書で確約することはできないとしています。そうである以上は、バイデン政権にはこの問題をうまく着地させるための、一貫した対ロ戦略が必要になってきます。しかし現段階では、それがほとんど見えてきません。ヨーロッパの同盟国との足並みも、なかなかそろっているとはいえない状況です。それが、現在の最大の不安材料の1つになっています」
三田キャスター「情勢が急激に変わりゆく中、緊張が高まっています。今後の動向をしっかりと注視していきたいと思います」
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