患者、そして家族が望むものは 在宅医療のいま(静岡県)

コロナ禍の今病気やケガをしたときの病院への通い方について考え直している人たちもいるかもしれません。いま、定期的に医師が自宅などに来て、診療をしてくれる「在宅医療」を望む人が増えています。住み慣れた家で家族と生活しながら受ける在宅医療のいまを取材しました。

 静岡市内で在宅医療を受けている池田立一さん(83)です。心臓内にできた血栓で脳の血管が詰まる病気を患い、左半身に麻痺が残っています。病状の管理と治療のため月に2回、定期的に医師がやってきます。
<医師>「いいですね。麻痺の方はどうですかね?」
<池田さん>「まだそんなに自由がきくわけではないけれど、それでもこうして動かしてみると」
<医師>「これは励みになりますね」
 在宅医療は一人で通院するのが難しい人なら誰でも利用することができます。
<池田さん>「治ったような気持ちですよ。来ていただくだけでもありがたくて」
<野村医師>「いいお褒めの言葉をいただいたけど、より努力しなけりゃいけませんね、私も。それを聞くとね」
 池田さんを担当しているのは静岡市内のクリニックに勤める野村医師です。2020年、81歳にして在宅医療の専門医の資格を取得しました。
<野村医師>「自分の自宅で療養生活ができて、ご家族、特に奥様とともに生活していけるというのが、一番心身が安定しますよね」
 野村医師が勤める静岡ホームクリニックは、2015年に開業した在宅医療を専門とする診療所です。比較的、新しい診療所ですが、患者数は急増しています。2020年診ている患者数は800人ほどになり、地域での役割も大きくなっています。
<静岡ホームクリニック 内田貞輔理事長>「ここの地域で最後まで安心して過ごすときに、医療という面で心配にならないですむよと。そういところをこの地域でみなさんと一緒に目指していきたい」
<野村医師>「おはようございます。きょうはいかがですか、体の調子は?」
 81歳の在宅医療専門医、野村医師です。この日は1日で17軒の家や施設を回るスケジュールです。
<野村医師>「それでは大きな息を吸って吐いてください」
 患者に惜しまれながらも15分ほどで診察を終え、次のお宅に向かいます。
<野村医師>「楽しいんですよ。お年寄りの方といろいろ会話したりすることがね。自分にとって合ってるんじゃないかなぁ」
 一方、クリニックの看護師は在宅医療を2018年に終えた元患者の家を訪れていました。
<遺族>「これ亡くなる1カ月前かな、本当に幸せだよ」
 岩立敏彦さんは亡くなるまでの1年10か月の間を在宅医療を受けながら自宅で過ごしました。孫にお風呂に入れてもらったり、宿題の本読みを聞いてあげたりと家族との時間を過ごしました。
<娘・陽子さん>「病院だとおじいちゃんは病人だったと思うんです。でもここにいたら、ただのおじいちゃんなんです」
 そして2018年、大好きなおじいちゃんは家族に看取られ息を引き取りました。
<娘・陽子さん>「(孫が書いた手紙に)おじいちゃんはみんなに支えてもらって生きたと。自分も支える人間にもなりたいけど、支えられる人間にもなりたいと書いてあった。自分の命を支えられるというのを負い目ではなく、それによっておじいちゃんが幸せだった、と。父の命の教育ではないけれど、それを身に染みてこの子たちに落ちたと思うと、かけがえのない父が残した大きな財産なのではと思う」
 人生の最期までの時間を誰と、どこで、どう過ごすのか。在宅医療はその有力な選択肢の一つとして一層期待が高まっています。
#オレンジ6 12月21日放送

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