「優秀な職人だったが」大阪ビル放火 容疑者の変化(2021年12月19日)

24人の命を奪った大阪のビル放火事件、現場近くの防犯カメラには容疑者とみられる人物が自転車に乗り、現場方面へと向かう姿がとらえられていました。

▽大阪ビル火災 近所の人が目撃 61歳容疑者の横顔
(佐々木一真アナウンサー)
「24人が犠牲となった火災が発生した大阪北新地の現場です。現場前にはこのように多くの花が手向けられていて、今も男性が手を合わせています。」
火を放ったとされるのは、このクリニックに通院歴のある谷本盛雄容疑者61歳。火災直後、心肺停止で搬送され、現在、重篤な状態だと言います。
(佐々木一真アナウンサー)
「クリニックで火災が発生するおよそ30分前。谷本容疑者が住んでいたとみられるこちらの住宅でも火災がおきています。谷本容疑者はこの火災の直後、クリニックの方向に向かって自転車で移動したことがわかっています。」
この住宅でぼやが起きる直前の様子を近所の人が見ていました。
(近所の人)「火事の30分前、私ベランダで(谷本容疑者を)見ましたから」
Q. どういう状況でした?
「家の前でカギを閉めてはるのか開けてはるのか立ってはったから、それをちらっと見て」
Q. その時はどういう服装だった?
「白っぽかったけどな・・・もう一瞬だけやったからね。(午前)8時半ごろかな、それで30分くらいしてから消防車がバーッと来て止まったから、主人が出たら『角の部屋やわ』と言って『逃げなあかんわ角やったら』言うて、着替えて表に出て・・・1階は煙出てなかったんですよ。ホースを2階3階に上げていかはったら煙がバーッと出てきたから。火事の後でカセットコンロと水とは見たんですよ。白いふとんだけは敷いてあって」
Q. ちょっと乱雑な感じ?
「乱雑に散らかっているような感じ」
谷本容疑者については・・・
「ちょっと変わった人、普通やったら引っ越しして来はったら『おはようございます、こんにちは』とか声掛けますけど、一切そんなんなかったしこっちも声掛けなかったし。ここ1カ月ぐらいの間で、たまに自転車に乗って来てカギ開けて入ったりしてはるのは見たことある」

▽事件直前・・・自転車で現場方面へ
事件当日、谷本容疑者とみられる人物が防犯カメラに残されていました。現場のビルから西におよそ1.5km離れた場所で、時間は火災が起きる30分ほど前の午前9時49分、黒っぽいジャケットに帽子、そしてマスクをつけた谷本容疑者とみられる人物が自転車に乗って現場の方へ向かっている様子が映っています。
自転車の前かごに袋のようなものが。後ろの荷台には白っぽい荷物が乗せられひものようなもので固定されているのがわかります。クリニックまで乗ってきたと見られる自転車はビルの前で見つかりました。防犯登録から、谷本容疑者の物だということが分かっています。谷本容疑者とは、一体、どんな人物なのか・・・近所の人はこう話します。
「あまり良い印象には思わなかったんですけども。」
Q. いつ頃から隣の家に来た?
「1人で来られたのは数カ月前なんで。わからんかったんで、私も。(谷本容疑者を)2カ月~3カ月くらい前に私は見てたんですけど、自転車止まってるし人が入っているなって感じはあったんですけど・・・」
最近、ここで暮らし始めたとみられる谷本容疑者。実は、およそ30年前にも同じ家で、家族4人で暮らしていたといいます。
「震災の前くらいからです、(阪神淡路)大震災の。(子どもが)まだちっちゃい赤ちゃんのころ、1回、引っ越してどこか行きはったんで。そこからまた近頃、数カ月前から1人で住まれているということだったんで。自転車でどっか行っているのは見かけたんです。1階の部屋だけ電気ついてる状態だったんで、ちょっとおかしいなって」
Q. 何かトラブルというのは?
「特になかったです。近所ではなかったです。会話もないです、まったく、あいさつもしませんし。」

▽元勤務先の社長が感じた”変化”
これは、15年ほど前の谷本容疑者。当時、勤めていた板金工場の社長は、こう話します。
(谷本容疑者の元勤務先の社長)
「性格のまじめな責任感のある男でした。」
Q. 期間としてはどれくらい働いてた?
「前後合わせて10年近くおるんちゃうかね。1回辞めて7年ほどいてもう1回帰ってきて辞めてもう来なくなった。」
Q. 一度辞められたのはどういう理由?
「最初の時は辞めたいって、辞めさせてくれ、他にやりたいことがあるから言うから」
Q. 戻ってきた時は?
「戻ってくる前は、やっぱりね社長、こっちもうまいこといかないんでもう一回使ってくれんやろかて」
Q. 仕事ぶりは?
「優秀ですわ。あれだけの職人はなかなかいない。」
Q. 同僚とのトラブルは?
「ないですね。同僚とのトラブルというよりも自分は先輩だから後輩に教えてやって叱ってやるとそういうことはあるけれど。」
優秀な職人で同僚とのトラブルはなかったといいますが、家庭内のトラブルで少しずつ変化が・・・
「奥さんと離婚せないかんと、そういう自分のあれで、内々であったかも」
Q. 家庭の事情で欠勤が続いたとか?
「離婚されてそれがあって・・・子どもさんを一人一人が引き取りたいと・・・。『息子長男をわしが引き取って、嫁が次男をみて、ほんで別れた』って言うて・・・ずるずる休むようになった。」
Q. ずる休みの後、きのうどうしてたか聞いたら?
「『すみませんでした』と。ほんでどこ行ってたか聞いたら『いやちょっと』でそれでおわり。(離婚する前後で)なんかビクビクした、そわそわしたそんな感じはあったですね」

谷本容疑者が以前住んでいた家の近所の人は・・・
Q. 谷本容疑者の出入りはここ最近ある?
「 ご主人?ないと思います。引っ越して来られた時は何回か見た、見かけたくらいで、作業服で出入りしてた時はお仕事行かれる時とか、帰って来られた時の後ろ姿を見たぐらいで」
Q. 当時 家から大きな物音やけんかの音などは?
「ないんですよ。音がうるさいとかトラブルもなかったので、全然、皆さん息子さんも大きかったし静かに暮らされてる感じでしたけど。」

▽瞬時に“ガス充満”か・・・内部再現で検証
24人の死者をだした、ビル火災。
谷本容疑者は、クリニックに入って来るなり、持っていた紙袋を床に置いて蹴り倒し、入っていたガソリンとみられる液体に火を着けたといいます。
(東京理科大学 火災安全工学 大宮喜文教授)
「ガソリンは燃えだした時に一気に爆発的に燃える。そうするとその空間内にある可燃物に、その爆発的に燃えた火炎が口火となって燃え移ることがある。空間全体が一気に火の海に包まれる」
今回の火災で延焼したのは、床面積のおよそ1/3にあたる、わずか25平方mあまり。火は30分ほどで、ほぼ消し止められました。
これまでに死因が判明している人の多くは『一酸化炭素中毒』。
(佐々木一真アナウンサー)
「なぜ、被害はここまで拡大してしまったのでしょうか。番組では内部を忠実に再現して、その時なにが起きたのかシミュレーションしました。」
シミュレーションは、1Lのガソリンが受付付近で燃えたと想定。二人の専門家の協力で、一酸化炭素の広がり方を解
析しました。すると・・・
出火と同時にガスは待合室に拡散し始め、わずか7秒ほどで院内の全てのエリアに広がっていったのです。
(東京理科大学 火災安全工学 大宮喜文教授)
「火災時に発生する煙というのは1秒間に0.5mから1mくらい進むと一般的に言われています。この空間の形状ですけど奥行きが16m位ということですので、それより早い時間で伝わっているということは、それだけ火災の激しさを意味している」
また大宮教授は、クリニックの写真から、室内のある特徴に着目しました。
(東京理科大学 火災安全工学 大宮喜文教授)
「この上にこう隙間があるような形ですね。ですから天井の付近を介して火災で発生した高温の煙などもですね、この上を通って奥の方に伝わっていったと」
室内の複数の箇所にある“天井との隙間”。この完全に遮断されていない空間が、ガスの充満を早めた可能性があるのです。さらに・・・
(東京理科大学 大宮喜文教授)
「このじゅうたんなんですけど、場合(材質等)によってはじゅうたんも燃える。そして燃え広がった炎が口火となって、こちらの家具の様なものも燃焼しだしてくると、この辺り一帯が火炎、あるいは(一酸化炭素を含んだ)黒煙、早い段階で満たされてしまって、決して人が通れる状況ではなかったのではないか」

19日、大阪府警は、亡くなった24人のうち、クリニック院長の西沢弘太郎さん(49)ら、8人の身元が特定されたと発表。これで身元が判明した犠牲者は、合わせて14人となりました。

12月19日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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