【解説】無免許運転で当て逃げ、木下都議「議員辞職しない」でどうなる報酬

無免許運転で当て逃げ事故を起こし書類送検された木下富美子東京都議が、事故以来初めて公の場に姿を現し、議員を辞職しない考えを示しました。

今後は免許を取得せず、運転はしないと語った木下都議だが、9日まで都議当選からおよそ4か月、公の場に姿を現すことはありませんでした。

この間の議員報酬は1か月分81万7600円として300万円以上。批判も多い中、これらの報酬についてはどのようにするのでしょうか?なぜこうも都議としての地位は安泰なのでしょうか?今後、辞職する可能性はあるのでしょうか?

■“無免許当て逃げ”木下都議長期欠席の理由

南波雅俊キャスター:
久々に公の場に姿を見せた東京都議会の木下富美子(きのした・ふみこ)議員。まずは議会欠席の経緯から見ていきます。
木下議員は大学卒業後に博報堂に入社しました。その後、小池百合子さんが環境大臣だった頃にクールビズのキャンペーンにも参画をしています。そしてその小池百合子さんの都民ファーストの会から2017年都議選(板橋区)に出馬し、初当選を果たしています。そして今年の7月4日、都議選で再選を果たすことになりました。ただもう、その翌日、免許停止中の7月2日に当て逃げをしたことが発覚して、都民ファーストの会を除名処分となりました。都議選の2日前にそういったことを行っていたということなんです。さらに、今年の5月~6月に6回無免許運転をした疑いもありまして、9月には書類送検をされている。当選からおよそ4か月、公の場に姿を現すこともなく、いわゆる雲隠れの状態でした。

■4か月ぶりの公の場 何を語った?

11月9日、4か月ぶりに記者団の前に姿を現して語りました。厳しい批判があるというのは理解している。ただ、「続けてほしい」という声もあるので、都議を辞職しない意向を示したんです。さらに本人は今後、免許を取得はしない、運転もしない、当時乗っていた車も処分したと話しました。それからこの事故の前から既に体調は悪かったんですが、事故を機にその体調がさらに悪化。寝られない日々が続きました、食べられない日もあった、というふうに本人は話しました。

井上貴博キャスター:
やりとりの中で「捜査中」という言葉もあって、こういっては何ですが、都合のいい言葉なのかなというふうに感じてしまったんですが。

星浩 TBSスペシャルコメンテーター:
「捜査中なので詳細は話せない」ということを言い訳に使っていますよね。政治家には良識があるということを前提に制度が設計されてるので、こういう良識がない方も守ってしまうっていう非常に大きな矛盾がありますよね。

ホラン千秋キャスター:
本人が「免許停止中に車の運転をしてしまったことはあってはならない。今後二度とこのようなことを繰り返すことがないように」というふうに話されているんですけど、疑いではありますが今年すでに5月から6月に6回無免許運転を繰り返しているので、このように公にならなかったら、どうなっていたんだろうと考えてしまいますよね。

井上キャスター:
全然天秤にかけられないんですけど、民間企業でいうと4か月間説明なく休んだら、解雇されるんじゃないかなと。

星コメンテーター:
だいたいそういうルールでしょうね。

■議会欠席してももらえる報酬

南波キャスター:
議会に来なかった期間の報酬はどうなっているのか、そして辞めさせられないのかというところも見ていきたいと思います。
まずは当選後の報酬なんですが、議員報酬が月に81万7600円、そして政務活動費も月に50万円支給されるということなんですが、都議会の事務局に取材したところ、すでに7月~10月までの4か月分は支給されている。これをもし仮に全て受け取っているということになると4か月で約527万円ということになるんです。さらに、12月には冬のボーナス約204万円も、4か月休んでいたとしても支給されるということなんですよね。

木下都議は10日、記者団に対して、議員報酬について「私自身受け取るべきではないという考えの中、返納もできないので、すでに寄付をした」と話したんです。では、返納できないというところなんですけれども。まずこの議員報酬の受け取り拒否つまり返納となりますと、東京都への寄付となってしまう。選挙区への寄付行為に当たるので、これが公職選挙法で禁止されているということで、本人はNPOなどに寄付をしたというふうに話をしています。それからもう一つ気になる50万円の政務活動費については「請求しない限りは都に返納される仕組みなので、請求しません」と話しています。

■批判殺到も議員の地位安泰?

南波キャスター:
では、あれだけ批判の声も高まっている中で、辞めさせられないのは何でなのというところなんですけれども、すでにもう7月と9月に本人への辞職を促す「辞職勧告決議」が2度可決されているんです。ただこの辞職勧告決議というのは、法的拘束力はありません。つまり、やめてくださいというところまでは言えるんですが、やめさせるというところまではいけないということで、それに木下さんが応じることはありませんでした。ですから、10月から、木下都議から直接説明を求める召喚状を3度送付しているんです。さらに召喚状に応じなかった場合について、弁護士の若狭勝さんに話を聞きますと、「議員が正当な理由がなく招集に応じない場合は、議会の議決を経てこれに懲罰を科することができる」ということが地方自治法の第137条に書かれている、ということなんです。懲罰の中には除名という処分もありますから、除名になりますと議員はやめなくてはいけないということになるんですが、1度目2度目の召喚状に関しては、体調不良などを理由に応じませんでした。本人は正当な理由として体調不良というところをアピールしたのかもしれません。ただ若狭弁護士の話では、召喚状に従わなかった場合には除名の手続きが可能だったんだけれども、今回の登庁によって、除名ができなくなったというふうにも話をしています。

■議員は続ける?リコールは?

南波キャスター:
では、今後どうなるのかということなんですが、リコールという方法がまず一つ考えられます。住民による解職の請求なんですが、これがまた時間がかかるんです。議員の当選から1年間はリコールができない仕組みになっています。つまり、2022年の7月以降にしかリコールは行えない。ただリコールを行うのも手続きが煩雑で、まずは選挙区内の有権者の3分の1以上の署名が必要になってきます。そしてこの署名を経た上で住民投票が行われます。有効投票となったうちの過半数の賛成がないと、このリコールも成立しないということで、自分から辞めると言わない限りは、かなり煩雑な手続きがあったりと、実際のところは難しい部分があるのではないかということなんです。

井上キャスター:
ルール上の問題もあるわけですか。

星コメンテーター:
除名するというのはなかなかできにくくなっていまして、やはりこの場合は政治的に、辞めていただくということをやるしかないんですが、やはり同じ都民ファーストの会の先輩でもあり、応援した小池百合子都知事が政治的にもうお辞めになったらどうですかという直談判をして、説得をするというのは本当は必要なんだと思いますね。

井上キャスター:
こういう法律、立て付けになっている根源というのはやはり議員というのは票で選ばれているので、そう簡単に周りからやめさせることはしなくていいだろうという考え方なんですか?

星コメンテーター:
それが一つと、仮に思想信条の理由でパージ(追放)するということをできにくくしようと。悪用されるというケースが万が一あった場合非常に困るという、民主主義の根幹を揺るがすわけですから。そういうことで守られているという自覚を本当は持ってもらいたいと思いますよね。(09日18:00)

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