【news23】20代の若さで新型コロナ重体に “仮死状態”からの生還 集中治療室での全記録

「若くても重症化する」―

#新型コロナ に感染し、一時、意識不明の重体になりながら生還した20代の男性。

治療の様子が、病院の映像に残されていました。何が男性を救ったのか―壮絶な闘病の記録です。

(#news23 7月28日放送)

千葉県の千葉大学医学部附属病院。
搬送されてきたのは、新型コロナウイルスの患者です。

この病院が受け入れたコロナ患者は
これまでに重症者を中心に70人以上に上ります。

先週、その病院を20代の元患者が訪ねました。

●元患者の男性(20代)
「お久しぶりでございます」
●中田医師
「だいぶたちましたかね」

待っていたのは中田孝明医師です。

男性は今年4月に新型コロナに感染。
一時、重体に陥り、生死を彷徨いました。
当時の記憶はほとんど残っていません。

男性はこの日初めて、病院が残していた1か月以上に
及ぶ自身の治療の記録を目にしました。

コロナ患者専用の集中治療室。
ベッドに横たわっているのが男性です。

●元患者の男性(20代)
「もうこれだと生きているのか死んでいるのかよく分からないですね本当に。仮死状態?」
●中田医師
「眠っていただいているような状態ですかね。少しでも体の活動が減るように。筋弛緩薬を一時使って 体自体が動かないようにしました。」

男性は20代と若く、基礎疾患もありませんでした。
しかし、入院直後は歩くことも出来たもののわずか3日で容体が急変。
男性の肺はほとんど機能を失ってしまいました。

●中田医師
「3日ぐらいみたところでやっぱり人工呼吸器だけでは体に十分な酸素を取り込めないことが明瞭になってきたので“ECMO”という装置をつけてます。」

ECMOとは人工呼吸器では対応できない
重篤な患者に用いる「人工心肺装置」のこと。
患者の足の付け根と首の静脈に管をつなぎ、
装置で血液に酸素を送り込み、体に循環させます。
患者の肺のかわりとなる、いわば「生命維持装置」です。

●中田医師
「太い管が」
●元患者の男性(20代)
「これがECMOの管ですか?」
●中田医師
「大量の血液を取ってこないと 体の酸素を補うだけのサポートができないので、太い管を心臓のそばまで入れなければならない。」

新型コロナの重症患者に特効薬はありません。
ECMOを使って肺を休ませ、患者自身の治癒力で
回復するのを待つしか無いのが現状だといいます。

その間、集中治療室では24時間態勢で
ECMOの管理や点滴の交換などが行われます。
映像にはスタッフが男性の体を動かす様子が映っていました。

●中田医師
「背中側に痰がたまったりとか 背中側の肺が悪くなってしまうので、時折体をひっくり返してあげる治療、腹臥位療法というのですが。」
「ECMOはちょっとしたことがあって それが回らなくなってしまうと即命に関わるので、
いろいろな管が入っているなか、気をつけながらひっくり返さないといけない。」

医師と看護師6人がかり。慎重な作業が続きます。

●元患者の男性(20代)
「看護師さんの汗でガウンのビニールが張り付いて腕が見えるぐらいになっている。」
「6人がかりだったとは聞きましたが全然自分で覚えてないのでびっくりでした。」

そして、ECMOを装着してから「9日目」。

この日の検査で、休ませていた男性の肺に
十分な機能の回復が確認されました。
命の危機を脱した瞬間です。

●中田医師
「足の付け根のカテーテルを抜いてる。」

男性の命をつないだECMOが取り外されます。

●中田医師
「ECMOの装置がきっちりと使えて回復するまで体外循環のサポートがしっかりできたことは間違いなく今回救命できた一つのファクターだろうと。」

手がかすかに動いています。男性はおよそ2週間ぶりに意識を回復しました。

●元患者の男性(20代)
「声は出せていないですねこのときは。
手を挙げるとか、うなずくくらいのことしか多分できてない。」
●記者
「意識が回復して最初に見えた景色は?」
●元患者の男性(20代)
「左右の後ろにあった点滴台と 正面側に二重扉が見えて、その向こうで看護師さんが働いている 動いているのが見えるとかそういう感じでした。」
「(つらかったのは)水が飲めなかったことです。飲もうとしてもむせちゃうので。歯ブラシに水を含ませて口の中をなぞるということをしていた。それだけが唯一の水分補給。」

入院して23日目。

●看護師
「失礼します。」

男性は集中治療室からコロナ患者用の一般病棟に移りました。

●元患者の男性(20代)
「何でもないように見えるのですが。最初10回ずつとか上がったり下りたりしただけで短距離走とかを走った後みたいな。」

3週間のリハビリで体力も徐々に回復。
退院出来たのは、実に入院から44日後のことでした。

男性は現在、息切れなどの後遺症はあるものの、
仕事にも復帰し、徐々に日常を取り戻しています。

首元には命をつないだECMOの管の痕が残っています。

●元患者の男性(20代)
「一人の命を助けるのに24時間態勢でつきっきりで見てくださって。」
「本当にもう感謝してもしきれないという気持ちで、ありきたりな言い方ですけれども感謝でいっぱいです。」

一方、今もコロナ患者の治療にあたっている中田医師は、
再び感染が拡大している状況にこう警鐘をならします。

●中田医師
「高齢者の方も当然ハイリスクなのですが、若い方の中にも命の危機に陥るケースもあります。」
「多くの人が無症状であるのも事実ですが、こういったケースもあるというのは知っていただきたいと思っています。」

#新型コロナウイルス
#ECMO
#人工心肺装置

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