「わからないところ、一緒に勉強しよう」――。国立市中部、富士見台団地の商店街に、「プラムジャム」という小さなスペースがある。普段は地域のNPOが使うこの場所に、毎週月曜の夕方、一橋生らと地域の小中学生が集まってくる。彼らは机を挟んで向かいあい、無料の勉強会がはじまる。

 学習支援事業を昨年7月から始めたのは、プラムジャムを運営する「くにたち地域コラボ」代表の田中えり子さんだ。「経済的困難があっても、わからないところを一緒に勉強できる機会を」と、市内で子どもの居場所づくり活動に取り組む団体「リング・リンクくにたち」と「野の暮らし」に協力を依頼。同じ商店街で活動するPro―Kの学生にも声をかけた。最初は報酬もわずかだったが、昨年10月には、内閣府の「子どもの未来応援基金」事業に採択される。年間391万円の助成金を受け、学生にアルバイト代も支払えるようになった。

 参加への抵抗感を減らすため、所得制限などは設けていないが、ひとり親家庭や授業についていけないなど課題を抱えた子どもも多い。「行政と民間がうまく連携して、必要とする子どもたちに支援を届けることを目指している」。口コミやスクールソーシャルワーカーからの紹介で、参加する子どもは22名にまで増えた。

 教材は、子どもたちが持ってくる宿題やドリルが中心。大人は見守り役に徹して、大学生が毎週決まった1~2名の児童・生徒を担当する。指導方針に迷ったら、授業後のミーティングで共有し、解決策を探る。「年齢が近い大学生に、子どもたちもすぐにうちとけます」。Pro―Kメンバーではない一橋生や他大生も参加している。

 今年の春から講師として参加する石原晶平さん(商3)は、小中学生を1人ずつ担当。そのうち小学4年生の児童は不登校の傾向にあり、学校の進度から遅れている範囲を石原さんがフォローする。授業の合間の休憩時間には学校での出来事を聞いたり、2人で近くを散歩することもあるという。「どこがわからないのか、最近は自分から伝えてくれるようになって。信頼関係を実感しています」

 野の暮らし・代表として事業に協力する菅井まゆみさんも、子どもたちとの信頼関係を重視する。菅井さんはこの日、最近休みがちだという小学生を待っていた。「学習のフォローが必要な子が、学校の先生に頼んでも、『また今度教えてあげるから』と言われて、結局教えてもらえないことも多い。約束を守る、信頼できる大学生や大人がここで待っているということを、子どもたちにはわかってほしいんです」