横浜寿町・日本三大ドヤ街の今
ココがキニナル!
労働者の街とも言われた寿町は2018年現在、どのような変化を遂げているのか。ドヤに泊まって調べてみた(ライター・小林たかしのキニナル)
はまれぽ調査結果!
日本3大ドヤ街の一つに数えられる横浜寿町。2018年現在でも、街には簡易宿泊所(以下ドヤ)が立ち並び、独特の雰囲気は健在だ。だが、内部は大きな変化を遂げていた
ライター:小林 たかし
赤枠が寿町と呼ばれる地域である
午前10時ごろ、寿町最寄りのJR石川街駅に降り立つ。駅から関内方向に歩いて数分ほどの場所にあるのが寿町だ。周辺にある寿町、扇街、松影街などを含めて寿地区と呼ぶこともある。覚悟を決めて、足を踏み入れてみた。
寿町の中心部に続く道。信号がないのが特徴的だ
周囲からの視線が刺さる、今もなお残る独特な雰囲気
旅行気分でドヤの料金表や激安の自販機など、寿地区ならではのものを眺めていたところ、缶チューハイ片手におぼつかない足取りで歩く高齢の男性が、何事かをつぶやきながら、傍を通り過ぎていく。
この広告を見ているとき男性が私の傍を通り過ぎた
つぶやいている言葉がしっかりと聞き取れる距離まで男性が近づいてきた瞬間、私は自身が寿地区に足を踏み入れたことを改めて感じさせられた。
「・・・なぁに見てんだよ・・・見せもんじゃねぇんだよ」
はっと気づいて、周囲に目をやる。ドヤの前で座っているご老人や道行く人々が私をしげしげと見ているのだ。上に目をやると、酒瓶片手に筆者を見下ろす男性も。
ウワサで聞く事と、実際に足を踏み入れてみる事はかなり違う。冷や汗が背中を伝った。
一泊1700円のドヤを発見、宿泊交渉に挑む
ドヤ街の今を知りたくて、寿町に宿泊してみるつもりだったが、まだ宿も確保できていない。宿を探すため、しばし散策してみる。
外国人観光客向けの文言が並ぶ宿泊施設。寿地区では少し高めの料金設定だ
寿地区にはホテルと見まがうようなものから、旅行者向けの施設、いかにも“ドヤ”という名称が適している、怪しげな面構えのものまで大小様々な簡易宿泊所がある。中にはバリアフリーになっているものもあり、福祉の街としての寿地区の今を表しているようだ。
ペットと一緒に滞在できるドヤも
街中で動物を見ることはなかったが、中にはペットと一緒に滞在できるドヤもあるらしい。
一応ドヤらしいが、扉は閉ざされている
中には完全に来客を拒んでいるようなドヤもあった。どのような人がここで暮らしているのか、見当もつかない。
そんなこんなで滞在先を物色していると、寿地区の中心に近い扇街で1泊1700円と書かれた、手ごろなドヤを発見した。
中に入ってみると、管理人と思しき30代頃の男性が電話で何やら話をしている。仕事の話らしい。邪魔にならないよう、話が終わるまでしばし外で待機することにした。
早くしてほしい、そんな気持ちを抑え、数分待っていると小窓が開き、管理人の男性が顔を出した。
宿泊交渉をしようとした矢先、管理人がこう口を開いた。
「お兄さん、福祉(生活保護)の人?」
正直なところ、いきなりで面喰ったが、後で聞いた話によれば、寿町で直接窓口に来る人は福祉の人であることは少なくないらしい。
郵便番号を貸しているようだ
気を取り直し、改めて、素泊まりしたいと伝えると、管理人の目が曇る。とはいえ、せっかく寿地区の中心近くに泊まれるチャンス。逃すまいと交渉を続けた。
「まあ2泊だったらいいよ」交渉の末、1泊2200円で2泊なら泊めてくれるという。1700円ではなかったが、とりあえず滞在先が確保できたことに胸をなでおろす。窓口で宿泊費を支払い、管理人に案内されるまま、ドヤの中を進んでいった。