工事が始まった横浜市の新市庁舎の特徴は?
ココがキニナル!
2017年8月に横浜市役所の新庁舎が着工したけど、どんな機能があるの?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
みなとみらい、北仲、関内、桜木町・野毛の中間地点として、にぎわいを作る広場を設置。市役所利用者以外が使える商業施設もあり、環境配慮も実現
ライター:田中 大輔
横浜市の新市庁舎の建設工事が、2017(平成29)年8月1日に着工した。
約2年後、2020年の年明けごろに建物が完成し、検査などを経て2月ごろから順次仮使用をスタート。最終的には、6月末からの供用開始を目指している。
建設予定地
新市庁舎のイメージ(提供:横浜市)
大掛かりな出来事だけに、さまざまな意見が飛び交う話題だが、どんな建物ができ、市民はどんなメリットを得られるのか。
建設工事の始まったタイミングで、市の担当者である新市庁舎整備担当の高次和樹(たかつぐ・かずき)係長と遊亀佳孝(ゆうき・よしたか)さんに話を聞いた。
スペース足りずに年20億円
市庁舎の新築・移転をする理由は一つではないが、その中の大きな要素として、現市庁舎のスペースが足りていないという問題がある。現市庁舎ができた1959(昭和34)年の横浜市の人口は130万人余り。職員の数も今の半分程度の約3000人だったそうだ。
その後市民の数が3倍近くになり、職員も2倍に膨れ上がって現在となっては、60年前に建てられた建物が手狭になるのも当然ではある。そのため、現在の横浜市役所機能は市庁舎に収まりきっておらず、複数の周辺民間ビルを間借りしている状態だ。
古くなったこと、狭くなったことが主な理由
しかも、市庁舎の延べ床面積1万8953平方メートル(執務スペースのみ)に対し、借りている民間ビルの延べ床面積が4万8781平方メートルと大きく上回ってしまっている。
当然、家賃もバカにはならず、年間20億円を超える支出を生み出しているのが現状だ。
執務機能が本庁舎のほかに約20の民間ビルに分散している
東日本大震災の発生時には、耐震補強を終えていた市庁舎と違い、民間ビルに入る部署ではキャビネットが倒れるなどの被害が出たこともあったそうだ。
利用者にとっても混乱の元になっているし、これを解決する策として、すべての局が入ることのできる大きな市庁舎を新築しようというわけだ。
各区役所と保土ケ谷区にある横浜市消防本部は現在の位置のまま
新市庁舎は、地上32階、地下2階の高層ビルで、延べ床面積は14万1600平方メートル(共用部分や駐車場、後述の商業スペースなども含む)となる。中層部が議会機能、高層階が行政機能を持つことになる予定だ。
新市庁舎の外観イメージ(横浜市ホームページより)
機能としては、すべての部署が一つのビルに収まるということがなによりのメリットで、これによって無駄な出費を防ぐなどのお金の面でのプラス、仕事の効率アップや利用者の使い勝手が改善されるなどのプラスが見込まれている。
市役所と関係なく使えるスポットも
このほかのメリットについて、高次係長は、「低層部の市民利用スペースや商業施設、特にその中にある『屋根付き広場(アトリウム)』が目玉です」と話す。
新市庁舎は単なる役所ではなく、「にぎわいを作りだす」というコンセプトがあるそうで、低層部には誰でも利用できるお店や、市民のためのスペースが用意される。
目玉の一つという「アトリウム」(横浜市ホームページより)
高次係長が話す「屋根付き広場(アトリウム)」は、みなとみらい線・馬車道駅から直結の屋内広場で、イベントスペースなどとして活用される予定だ。3階相当の吹き抜けで、270インチ程度の大型スクリーン、音響設備や無線LANなどが設置されるという。
合計で4000平方メートルにもなる商業スペースは閉庁日にも利用可能で、市役所に用のない人でも気軽に立ち寄ることができる。どんなお店が入るかは未定だが、複数の飲食店や金融機関が入ることが想定されているので、食事をしたり、お茶を飲むためだけに市庁舎を訪れることができるというわけだ。
低層部の配置イメージ。事業者は2018年前半をめどに選定する(提供:横浜市)
また、3階部分にはみなとみらい方面を見渡せる展望スペースも用意。
「新市庁舎の建つ場所は、みなとみらい、北仲、関内、桜木町・野毛などの結節点になります」と話す高次係長は、「特に、回遊スポットの少ない北仲、関内・関外側への拠点になれば」と続ける。
新市庁舎が4エリアの連結点になる(横浜市新市庁舎デザインコンセプトブックより)
ベビー休憩室や授乳室など、周辺観光などの際にネックになりがちな施設も置き、「プラスアルファの価値を作って、市役所に用がない人でも来てくれる建物になってほしい」とのことだった。