はじめに
この資料館は、貴重な資料や歴史の記録が整理されているわけではありません。川崎南部で、今、高齢期を迎える在日一世を中心に、たくましく生きてきた昨日と今を学び、記録し、戦中、戦後の在日コリアンの生活を追体験する活動を押し広げ、「差別の醜さ、戦争の悲惨さ」を語りつぐ媒体として、この資料館を開設しました。
戦中、戦後も、川崎南部は、厳しい民族差別の中、「仕事」「住まい」「食」「結婚」等、在日コリアンの生活の根幹に関わる部分を情報発信し、供給してきた歴史があります。それは民族差別の裏返しでもありましたが、誇るべき街の現代史を刻んできたといえます。街々には､差別を跳ね除け生き抜いてきた「つわものたち」家族を支えぬいた「小さな偉人たち」がいます。その暮らしを支えぬいた主人公の多くは女性たちです。そして、在日コリアンと正面から向き合い、生活してきた日本人たちも、田舎を追われるように出てきた生活史を抱えながら、反感や共感の生活史を織り成してきました。
今、そうした地域社会が失われつつあります。そして、多くの無形文化財が、日々失われています。在日一世がキムチを漬け、どぶろくを作ってきた”かめ(瓶)”が廃棄され、路地裏で育てた“とうがらし”がスーパーにとってかわりました。宇の読み書きができなくともいや、できないからこそ生活・文化の経験を血肉化した、在日一世が元気を失っています。コミュニティの崩壊は、子育てと高齢者の暮らしを最も鋭く直撃します。在日３世４世５世が自分らしく生き、韓国･朝鮮に帰らない、帰れない在日高齢者が、“老いの今”を豊かに生きるために、私たちはこの生活文化資料館サイトで、多くの方々と現代史、現代文化、川崎南部の地域文化を共有、共感したいと思います。
あなたも、私たちの歩みの仲間として参加してください。
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